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84話 第四章 第十三節 当選結果

「おじさん、どう? 当たってる?」


 トウカはそう言うと、宝くじを店主に渡した。店の店主が宝くじを覗き込む。


「おっ! 嬢ちゃん。大当たりだよ」


 トウカが目を見開きうるませる。一等のティアラが何としても欲しい。そして、この瞬間、ティアラがトウカの物になったのだと。


「三等、おめでとう」


 店主の言葉にトウカは肩を落としてガッカリした。まんまと店主の術中にまったようだ。そもそも、もし一等が出たのなら、店主の表情が曇るであろう。何たって商売だ。ホイホイと一等を取られてたまるものかと、店主はそう思っているに違いない。


「オヤジ? 三等ってことは二つ数字が当たっていたのか?」

「そうだよ、兄ちゃん。一等は四つの数字が的中。二等は三つ。三等は二つ。四等は一つだ」


 トウカはその内の三等を当てたようだ。未だにトウカは肩を落としている。一等が当たったと思ったのに外れだったのだ、無理もない。しかし、そう簡単に当たらないのが宝くじ。だから、店が儲かる。上手に出来ているのだ。三等が当たりでもなかなかの幸運である。一等など約376万分の一、そんなものホイホイと当たるはずがない。


「私のも見てください」


 ツバサは店主に宝くじを渡した。


「うーん。残念だね。ハズレだよ」


 ツバサはトウカとは別の意味でガッカリした。ツバサは四等すら当たってなかった。いや、確率的に言えば、それが普通だ。


「ショウ先輩の誕生日がいけないんですっ!」


 ツバサがショウに八つ当たりを始めた。理不尽にもほどがある。選んだ本人の責任のはずなのだが。


「そんなこと言われてもなぁ」


 ショウは、買えとも言っていない誕生日の番号を指摘されて困るしかない。


「それで、あんたは、どうなのよ?」

「ん? オレか?」


 ショウも宝くじを取り出した。そして店主に渡した。


「大当たりだよ」


 店主がトウカの時と同じ言葉を発した。店主の顔色が悪くなってないところを見ると、一等や二等ではないことをさっすることができた。そのためショウはあまり期待しなかった。しかし、トウカは大当たりと聞いた途端にウキウキとし始めたのだ。


「で、オヤジ。何等なんだ?」


 ショウは冷静に店主に聞いた。聞くまで何等が出たのか分からないからだ。


「三等だよ」


 ショウは、やっぱりな、と鼻で笑った。ショウの隣ではトウカがまたしてもガッカリしている。まるで、太陽を失った向日葵ひまわりの様に。トウカの姿は、はたから見る分には楽しいものだ。


「おじさん、イカサマしてないでしょうね」


 トウカは鋭い目つきで、店主をにらんだ。いよいよトウカが他人に当たりだした。もはや新聞に載る英雄はやめたようだ。


「うちはね、宝くじ協会に入ってるから、当選番号は一週間前に報告してあるんだよ。一週間前から当選番号は決まってるんだよ。イカサマのしようがない」

「そうなの?」


 トウカが疑惑の目を店主に向けた。しかし、宝くじのシステムを疑っても仕方がない。もし仮に、宝くじ協会の話が作り話だとしたら相当なペテン師だ。


「トウカ? どうしたんだ? そんなに一等が欲しいのか?」

「そうよ。あのティアラ買ってくれるの?」


 トウカが子犬のような目をしショウに懇願した。


「お嬢ちゃん、残念だけど、あれは売り物じゃないんだよ」


 ショウは店主の言葉を聞き、安堵あんどした。売り物だなんて言われたら、買わされるのは必死だ。そして、拒否するのにどれだけの労力をついやさなければならないだろう。


「ショウ先輩、私も欲しいです」


 トウカに続けて、ツバサまで欲しがる始末だ。


「おい、二人とも、売り物じゃないって言ってただろう? 諦めろよ」


 ショウが二人に諦めさせるため、売り物ではないと強く言った。それを聞いたトウカとツバサは肩を落とした。


「で、オヤジ? 三等の賞品は何なんだ?」

「あぁ、賞品ね。ペンダントだよ」


 店主が後ろの棚から、ペンダントを二つ取り出した。そして、ショウとトウカに渡した。


「私のがないですっ!」


 ツバサがご立腹りっぷくのようだ。他人が貰えて自分がもらえないと、不思議と欲しくなるの人のさが


「そりゃそうだろう? お前は当たってないだろう?」

「でも……、でも。トウカさんと御そろいなんて……。はぅ……」


 ツバサの元気がなくなった。一方トウカは、一等が当たらなくて肩を落としていたはずなのに、ペンダントが始めから欲しかったような顔をし始めた。


「あ、あたし。これ欲しかったのっ!」


 トウカがニコやかな笑顔をみせた。


「なんだ? トウカはこれが欲しかったのか? じゃあ、オレのもやるぞ」


 三等のペンダントを貰ったショウではあったが、特に欲しいアイテムでもない。だったら、ここまで喜ぶトウカにあげようと思い付く。


「もう、あんたが持ってなければ意味ないのっ!」

「ん? トウカ、お前、あんなにペンダント貰って嬉しそうにしてたじゃないか? 二つももらえてラッキーだろ?」

「もう、そういうことじゃないわっ!」

「じゃあ、どういうことだよ?」

「あんたが持ってないとしょうがないのよっ!」


 ショウの頭の上には、はてなマークが浮かぶだけだ。


「じゃあ、ショウ先輩。私にくださいっ!」

「ツバサ? お前も欲しいのか」

「はいー」

「ツバサさん、ダメだわ。それあいつのだもん」

「で、でも……。お揃いだなんて……」

「じゃあ、オレはどうすりゃ良いんだ?」


 ショウは腕を組んで考えた。トウカにあげると言うと、いらないと言われ。ツバサにあげるようとすれば、トウカが怒り出す。かと言ってショウ自身が持とうとするとツバサが欲しがる。意味が分からない。この状態を打破だはするための最良の方法をショウが提案した。


「オヤジ? このペンダントの買取はいくらだ?」


 ショウ自身、このペンダントを早く手放したい。呪われたペンダントを。


「あんた、売るなんて何考えてるのっ!」

「ショウ先輩、売っちゃダメですっ!」


 どうやらショウは最悪の選択をしたようだ。トウカとツバサの両方から怒られるという最悪の発言。


 ショウが、二人に怒られて固まっていると、ツバサにペンダントを奪われた。


「私が貰いますっ!」

「あぁ、もう……」


 ツバサがペンダントを手に入れると、トウカがブーブー言っている。トウカとツバサで話し合いを始めた。ペンダントがショウの手から離れたことで、火種が別のところに移り安堵あんどをするショウであった。

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