83話 第四章 第十二節 新聞
ショウ達が向かったのは先ほど宝くじを買った道具屋だ。道具屋であれば、簡易な服なら売っている。特殊な能力の武器防具は専門の店でしか買うことは出来ないが、通常の装備であれば道具屋で十分なのだ。
「オヤジ、女性物の魔道服を貰いたいんだが」
ショウの目当てはユウに着せる魔道服である。そのことを道具屋の店主に伝えたのだ。
「そこのお嬢さん方にかい?」
店主がショウの後ろにいる、トウカとツバサに目をやった。すると店主が目を見開き驚きの顔をする。
「オヤジ? どうしたんだ?」
ショウは店主の表情が変わったことが気になり質問する。
「そこの子のことを知らないのかい? 今、新聞に載ってるよ」
そう言うと、店主がレジの下から皺クチャになった新聞を取り出した。暇な時間に読んでたであろう新聞を。
「新聞?」
ショウはレジに身を乗りだし、店主が持つ新聞をかっさらう。
「お客さん。立ち読みは困るよ」
皺クチャになった新聞に価値があるのかと言えば微妙なところだが、店主が商品だと言った以上、お金を払わないといけない。ここの店主はなかなかの商売人だ。
「じゃあ、まぁ……買うとするか」
ショウはモヤモヤする気持ちもあったが、それよりも情報を優先にした。ショウが小銭を出して店主に渡す。
「まいどあり」
これで新聞の所有者はショウだ。心置きなく新聞を開ける。ショウが新聞を開こうと、記事に目を落とす。
「何だこれ」
新聞の一面にトウカの写真が載っている。それにショウが驚いたのだ。
「おい、トウカ? お前、新聞に載ってるぞ」
「何よ。あたし悪いことなんてしてないわ」
トウカにとっての新聞に載るということは、悪いことでしかない認識のようだ。当然いいニュースだって新聞に載ることもある。トウカは日ごろから新聞を見ていないのことがよく分かる。
「見出しを読んでやるよ『町の荒くれ者を撃退』ってなってるぞ」
「ちょっと、あたしにも見せてよ」
トウカはショウから新聞を奪うと記事を確認し始めた。
一面に載っていたニュース。それは、先ほど剣士に絡まれた時のことが載っていた。それは美化された内容だ。記事を要約すると、荒くれ者である剣士一行を魔封石を使って撃退したとのニュースだった。レベル5の魔法の入った貴重な魔封石まで使って荒くれ物を倒した英雄となっている。しかも、写真付きの大きな記事、トウカが魔封石を投げる姿がバッチリと写っていた。一方、ショウも写真の端に写っていた。しかし半分切れていて本人でなければ分からないレベル。それを見たショウは少しガッカリした。
「なんで、お前が英雄なんだ?」
「知らないわよ。あたしだって、こんな写真撮られてたなんて知らなかったんだもん」
「トウカさん、すごいですね」
ツバサも感嘆の言葉を発した。
「で、トウカ? 英雄になった気分はどうだ?」
「どうって、まぁ悪くないわっ!」
トウカは嬉しいとは言わなかった。恥ずかしいのであろう。
「まぁ、あまり目立つと前みたいになるからな。気を付けろよ」
ショウがトウカに釘を指した。昨日は、二回も盗賊に狙われた身。遠まわしに危険を伝えたのだった。
「もう、あのことは言わないでよ」
「トウカさん? 何かあったんですか?」
「何でもないわ。それより、早く買い物しましょ。あ、そうだ。宝くじ見ないとね」
トウカはツバサの質問を遮った。そして、宝くじのことを思い出したかのように話を逸らした。