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80話 第四章 第九節 メイド服

「ジャジャーン」


 ミサキが口で効果音をかなで、クローゼットを開いた。


「な、なんだ?」


 ショウがクローゼットの中を覗き込んだ。服がたくさん掛けられているだけの普通のクローゼット。別に大したこと無く安心していた。だが、しかし。


「これはね、トウカちゃんのメイド服とツバサちゃんの執事服でーす!」


 ミサキの発言に、ショウが肩を落とした。また、おふざけが始まったと言わんばかりに。クローゼットに掛けられた服の向きが悪かった。横向きだったためショウは気が付かなかった。まさかその服がメイド服と執事服だと誰が思うだろう。


「ミサキさん! あたしがメイドするの?」

「ミサキさん! 何で私は執事なんですかっ!」


 ショウも思った。トウカのメイドは百歩譲って分かるとしよう。しかし、ツバサの執事は百歩譲っても意味が分からない。


「それはね、マントにあるのよ」

「「マント?」」


 トウカとツバサは声を重ね、ミサキに質問した。


「今、マントをしないと外を出歩けないでしょ?」

「確かにそうだな」


 ショウはその点には納得していた。


「トウカちゃんはマントなしでも大丈夫だから、メイド姿でも問題ないでしょ? ツバサちゃんだとメイドにマント姿になっちゃうのよ」

「執事にマントもおかしいだろう」


 ショウの言うことが正しい。マントをする執事など聞いたことがない。


「執事なら、マントをお腹に巻けばいいのよ。腹巻きみたいにね。メイド服の中にマントをするのは大変そうだし」

「それって、ミサキの趣味じゃないよな?」

「あら? ショウ君のためだよ」

「何でオレのためなんだよ?」

「トウカちゃんのメイド姿とか気になるでしょ?」

「私はっ! 私はっ!」


 ツバサがミサキに噛み付いた。


「ツバサちゃんは執事姿がいいと思うよ」

「もぉー」


 ツバサは牛になった。


「で、その服いつ買ってきたんだ?」

「さっきのダーツ買ってきた時のついでよ」


 ミサキいわく、私用しようのダーツがメイン、仕事に使うユニホームがついで。そのように聞こえても不思議ではない言い方であった。普通逆だろ、とショウが心の中で呟いた。


「さっそく着替えてもらいましょ」


 そういうとミサキは一着のメイド服をトウカに渡した。


「さぁ、トウカちゃん。着替えてきてよ」

「ミサキさん、ホントに着るの?」


 トウカは恥ずかしそうにミサキに言った。


「えぇ、ショウ君が喜ぶよ」


 ミサキはニコやかにトウカに告げた。笑顔満点の笑みで。


「分かったわ。着てくる」


 先ほどまで恥ずかしそうにしていたトウカは、何故だか、メイド服を着ることを了承した。普通ならもっと拒むはずなのだが。


「おい、トウカ? マントはここで外すなよ。昨日みたいなことになるからな」

「分かってるわよっ! この変態っ!」


 トウカは捨て台詞を吐くと、浴室へと消えてい行った。


「次は、ツバサちゃんよ」


 今度は執事服をツバサに差し出した。


「私は、執事なんですか?」

「そうよ。トウカちゃんと同じメイドだと、任務に差しえるのよ。城の中を二人で別々に移動してほしいのよ」


 確かにそうだ。同じ業務をするのであれば同じ場所の移動となり警備にならない。その点、二人が別の業務を行えばそれぞれが別の場所の警備に当たれる。なかなか賢いとショウはフムフムと頷いた。しかし、ショウは一点だけどうしても気になることがあった。


「ツバサの執事とか、ミサキの趣味か?」

「何言ってるのよ、ショウ君。 私はそ、その、そっち系じゃないから。ただの任務のためだからね」


 ミサキの口調が少しおかしい。動揺しているようにも見えた。今、ちまたで流行っている男装喫茶というやつだろうか? ショウがミサキにジト目をやる。


「何よ、その目は?」


 これ以上、疑いの目を向けてもしょうがないと思ったショウは目をそらし、何も答えは帰ってこないだろう。


「ホントに着るんですか?」


 ツバサは渋々、執事服を受け取った。


 すると、トウカが浴室から出てきた。メイド服に着替え終わったようだ。


「あんた……? どう……? 似合う……?」


 トウカは顔を赤らめ恥ずかしそうに、スカートの前に手を重ねて下を向きながら言ったのだ。


「あぁ、似合ってるぞ」


 ショウも、納得するくらいのメイド姿。別にショウはメイドフェチとかのたぐいではない。それでも素直に感想が出るくらいの出来映えであった。


「そっ、そう?」


 トウカはショウに褒められたことを嬉しく思っているようだ。

 それを聞いた途端とたん、ハッと表情の変わるツバサが執事服をクローゼットに戻し、メイド服を手に取った。


「ショウ先輩、私もメイド服着ますっ!」

「でも、お前は執事になるんだろ?」

「いいじゃないですか、着てみたいんですっ!」

「お前? 恥ずかしくないのか?」

「は、恥ずかしくなんて……はぅ……」


 やはり、ツバサも恥ずかしいようだ。


「で、でも、トウカさんだけメイド服じゃ、ダメなんです」

「何がダメなんだ?」

「何でもですっ!」


 ツバサがメイド服を持ち、浴室へと消えた。


「ショウ君? 良かったね。ツバサちゃんも着てくれるって」

「な、なんで、オレに話しを振るんだ?」


 突然、ミサキに話しを振られて、ショウは戸惑った。これではメイド服好きのただの変態だ。


「あんた、顔がニヤけてるわよ」

「トウカ、そんなことないぞ」

「何よ、この変態っ!」


 トウカにとってのショウの評価は未だに変態のようだ。


「ショウ先輩っ! どうですか?」


 ツバサが浴室からメイド服に着替え出てきた。


「あぁ、ツバサも良く似合ってるぞ」


 少し、胸元はダボついてはいたが、とても可愛らしいメイド姿。


「本当ですかっ!」


 ツバサは目を輝かせながらショウに言った。


「ねぇ、ミサキさん。あたしにはこのメイド服サイズが合ってないわ」

「トウカちゃん、どうしたの?」

「この服、胸が苦しいのよ」

「あら、トウカちゃん用の採寸だったのに、おかしいわね」


 このゲームのキャラはリアルの体型と同じにしてあるという話はミサキからも聞いた。体型のデータについては申告制。そのデータを元にキャラクターを作り出している以上、服のサイズを違うなどそうそう起こることではない。ただ単純にトウカの口癖なのかもしれない。


「じゃあ、太ったかも……」


 ショックを受けるトウカがいた。そんなトウカを見ていて、何か言われるのもしゃくだと思ったショウは目線を変えた。ツバサの方に向けたのだ。


「ショウ先輩? 何ですか? 私の方を見て」

「いや、何でもないぞ」

「胸が無いって言いたいんですかっ!」

「いや、そうじゃない」

「今、無いって言いましたよね? ショウ先輩のバカぁーっ!」


 目線を変えたショウは、地雷を踏むことになってしまった。


 そんな時であった。窓際で光が発したのである。光の中には下着姿の黒髪の少女の姿がうっすら映るのだった。

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