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69話 第三章 第十一節 本性

 ショウはツバサを連れ、町を後にした。現在、二人がいる場所は木漏れ日が降り注ぐ森だ。初心者エリア。レベル40の服のショウとレベル50の服を着るツバサ。端から見れば初心者パーティーだ。


「あのー? どこまで行くんですか?」


 ツバサが心配そうな顔をしながらショウに聞いた。


「あぁ、まぁこの辺りでいいか」


 ショウが足を止め、ツバサの方へと向いた。


「さっき一緒に戦ってたのは、ギルドメンバーなのか?」

「はい。そうです」

「そうか、……あのギルドは辞めたほうがいい」

「やっぱり、そうなんですね……」


 ツバサが俯きながら言う。ツバサ自身も心当たりがあるような反応をする。


「でも、やめるって言いにくいんだろう?」

「は、はい……。でも、何で分かるんですか?」

「まぁな、そんな気がしたんだ」


 その時であった。ツバサのフレンドリーコールが鳴った。


『ねぇ、ツバサ? どこにいるのよ?』


 ローラからの連絡だった。


「はい。えぇっと、その……。私はダンジョンに行く間の森です」

『そう? そっちまで行くから』


 どうやらローラは森まで来るようだ。


「さっきのフレンドリーコールは誰だ?」

「うちのギルドマスターです。その……。今からここまで来るみたいです」

「そうか、まぁ、キミがギルド辞めたいのなら協力するけど、どうする?」

「えっと……、あの……」

「まぁ、すぐに決めなくてもいいけどな」


 ツバサからはギルドを辞めたいとの言葉は出て来なかった。


 そこへ、ローラ達ギルドのメンバーがやってきた。


「ツバサ!? その装備どうしたの!?」


 ローラは驚きの声を上げた。ダンジョンに放置したはずのツバサの装備が本人の元に戻っている。驚くに決まっている。


「これですか? この人が届けてくれたんです」


 ツバサはショウの方を向いて告げた。


「私の装備、拾えなかったんですよね? マスター?」


 ツバサは、戦闘で装備が拾えなかったからショウが届けてくれたのだと思っているようだ。


「それは……。そうだね……」


 ローラは本当のことを言うことが出来ない。ボスを無事倒すことが出来た事実も。装備を置いてきた理由もだ。


「マスター? どうしたんですか? 顔色が悪そうですよ」


 ローラは脂汗を浮かべている。まさかこんな形で装備がツバサの元に戻るとは思わなかったのだろう。


「それは、オレが届けた」


 ショウは口を開いた。その先を告げようか悩んだ。


「そう、うちのツバサがお世話になったわね」

うちのツバサ(・・・・・・)かぁ、よく言うな」


 ショウが意味深に発言をする。今までのことを全て見てきているのだから意味深にもなる。


「うちのギルドメンバーをどうしようがあなたに関係があるのかしら?」


 ショウは眉間にしわを寄せ、口を開いた。


「リーダーだかマスターだか知らないが、メンバーをそんな扱い(・・・・・)するべきではないな」


 ローラも引かなかった。


「あなたには関係ないって言ってるでしょ?」

「まぁ、そこまで言うなら、見たままをこの子に伝えさせてもらうがな」

「何を言おうって言うの?」

「まず、この子のお金はどうしたんだ? 拾ったんだよな?」


 ショウはローラがお金を拾ったところを見ていた。お金の行方をローラに尋ねた。


「それは……、返そうと思ってたわ。返せば問題ないでしょっ!」


 ローラはお金を拾ったことを認めてしまった。それを聞いたショウは畳み掛けるかのように話しを続けた。


「じゃあ、装備品はどうしたんだ? お金は拾えたんだよな? 装備が拾えなかったなんて言い訳はできないぞ」


 ローラは唇をかみ締めた。不用意な発言により自分が不利になってしまったことに気が付いたようだ。


「あぁ、うるさいわよ。ツバサが悪いんだからね。昨日の合コンも全部あんたが持ってくんだから。その仕返しをしたまでよ」

「マスター? それ本当なんですか……」


 ツバサは悲しそうな目をする。


「ええ、そうよ。あんたムカつくんだよ」


 いよいよローラは本性を現したようだ。


「オレの言ったことが少しは分かったか? こんなギルドは早く辞めた方がいい」


 ショウがツバサに言うも、悲しそうなツバサは返事が出来ないでいた。


「あぁ、もう鬱陶うっとうしいわ。憂さ晴らしさせてもらうわ。あなたには死んでもらうわ。レベル40の魔道服ね。私達には勝てないわよ!」


 ショウは現在レベル40の魔道服を着ている。低レベルのエリアで高レベルの服を着ていると手伝いを依頼されることが多い。初心者のフリをしておけば回避できる。そういった狙いで低レベルの装備をしている。実際はレベル99の魔道士だ。


「仕方ないな、ちょっと遊んでやるか」


 ショウは幸福の杖を構えた。幸福の杖を見たショウは唖然となった。これでは上級魔法は唱えられない。ここに来てピンチであることに気が付いた。


「あなた達、あの魔道士を倒すのよ」


 ローラの掛け声でギルドメンバーが抜刀を始める。鞘を擦れる音が鳴り響いた。メンバー五人が思い思いの装備を構えた。


「所詮はレベル40。私達を敵に回したことを後悔しなさい!」


 ローラがそう告げると、自身も短刀を抜き、構えた。

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