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56話 第二章 第五節 宝くじ

 トウカはウキウキと新しい靴でかろやかにステップする。かなりのお気に入りのようだ。足取りも軽い。もうじき宿屋という時に、トウカがくるりときびすを返し、ショウの方へと向いた。


「ねぇ、あんた? 運試しでもしていかない?」

「なんだそれ?」


 トウカは道具屋を指差した。店舗というより的屋てきやに近い。そんな店構えだ。トウカはショウの質問を無視して道具屋に足を運んだ。


「おい、どうしたって言うんだ?」

「これよこれ、宝くじ」


 道具屋には宝くじが売っていた。それをトウカが欲しそうにする。


「だけどな、こういうのってイカサマがあるんじゃないか?」


 イカサマと言う言葉に反応したのは、店の店主だ。


「うちは宝くじ組合に入ってるから、もうすでに当選番号も報告してあるんだ。イカサマなんてありゃしないさ」

「そうなのか?」

「ああ、そうだとも」


 宝くじは一から九十九までの数字を四つ選んで買うくじだ。換金は今晩七時よりとポップに記載がある。確立で言えば一等の全ての数字が揃うのが約376万分の1だ。こんなもの当たるはずが無い。だからこそ店が儲かる。


「あんた? 良いでしょ。あの一等のティアラが欲しいわ」


 トウカが指差すのは、店の奥、棚に飾られた目映まばゆいティアラだ。


「そんなもの当たるわけないだろう?」

「お兄さん。買わなきゃ当たらないよ」


 そりゃそうだ、とショウは思った。しかし、あれほどの賞品をホイホイ取られては店が丸損のはずだ。そんなクジを店主が勧めてくるということは、余程店主には取られない(・・・・・)自信があるのだろう。当たらないという自信だ。


「で、お前は本当に買うのか?」

「うん、買うわ。ティアラ欲しいもん」

「オレは、いらないけどな」

「なら、当たったら、あたしに頂戴ね」

「は? オレも買うのか?」

「いいじゃない。二人で買えば当選確率は二倍よ」

「確かにそうだけど、トウカ? 一等の確率分かってるのか?」

「そんなの知らないわ。当たる確立が倍になるのは分かるわよ」


 トウカは数学は苦手だったはずだが、当選確率が倍になるくらいは分かるらしい。


「分かった。分かった。買うから」


 ショウは渋々宝くじの用紙を買うことにした。宝くじの値段は回復ポーション五個分とそれほど高いものではない。しかし、それでも店が宝くじを売っているということは大層儲けているに違いない。


「んー。何番にするかな?」


 買うと言った以上、数字を選ばなくてはいけない。ショウはとっさに数字を選べと迫られ考え込む。


「あたしにも一枚」


 トウカも宝くじの用紙を受け取った。


「じゃあ、トウカのレベルが33で……」


 ショウは宝くじの用紙の33に丸を付けた。


「ちょっと、あんた。あたしは昨日の戦闘でレベルが上がったのよ。今はレベル34よ」

「そうなのか? 分かった。分かった」


 ショウは33に付けた丸を消し、34に丸を付けた。


「で、ツバサがレベル81でユウのレベルが96でオレが99で……」


 ショウは34、81、96、99の四つの数字を選んだ。


「おい、トウカ? 決まったのか?」

「まだよ」

「そんなに考えても、しょうがないだろう? 運なんだから」

「まぁ、そうだけど……。ところであんた誕生日はいつなの?」

「なんでいきなり、そんな話になるんだ?」

「いいじゃない、教えなさいよっ!」

「分かった、分かった。オレは11月28日だ」

「そう、まだ先ね」

「そういうトウカはどうなんだ?」

「あたし? あたしは6月の4日よ」

「もうすぐじゃないか? 誕生日プレゼントでもしないとな」

「本当?」

「あぁ、今度な」


 ニコリとトウカ表情が緩んだ。


「で、宝くじは選んだのか?」

「ちょっと待ってよ。今やってるから」


ショウはトウカが用紙に丸をつけているのを覗こうと身を乗り出すと。


「ちょっと、あんた見ないでよっ!」


 ショウはトウカに怒られた。


「何だよ、別に減るもんでもないし、見られて困るもんでも無いだろ?」

「うるさいわね」


 トウカが不満をあらわにする。選んだ数字を隠したいようだ。


 ショウとトウカは宝くじの数字が選び終わると店の店主に宝くじを手渡した。すると、店の店主が宝くじの用紙に魔法をかけ始めた。


「じゃあ、魔法で不正が出来ないようにしたからな。発表は今夜の七時からだ。当たるといいな」


 宝くじに不正をされえては商売上ったりだ。その辺りは店がしっかり押さえている。結局、ショウはトウカが何番を選んだのかも分からず、店を後にした。

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