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47話 エピローグ

「ショウ様、倒しましたわよ」

 ユウがにこやかな顔で言う。

「ああ、そうだな」

「願い事、何でも聞いてくださるのでしょ?」

 ショウが不味そうな顔をする。確かに願い事を聞くと言ってしまった。今さら無しとは言いにくい。

「そ、そうだった、かな?」

 そこへ、ツバサが駆け寄ってきた、全身黒焦げのツバサは可愛そうだ。

「なんで、ユウさんがいるんですかっ!」

 ツバサがユウに噛み付いた。

「私、魔法で吹っ飛ばされたんですけどっ!」

 ツバサが、顔を真っ赤にして怒る。当然だろう。戦闘中にフレンドリーファイアなど揉め事の元だ。しかも業とと来ている。

「わたくしは、ショウ様に敵を倒すように言われただけですのよ。そなたを『守れ』や『助けろ』なんて言われてないですわ」

 ツバサがショウを睨む。ショウとっては、とんだとばっちりだ。

「それより、ユウさん。何で下着姿なんですかっ!」

 ユウも自分が下着姿であるのを見ていた。

「あら、わたくしはそなたみたいに見られて困るような身体じゃありませんわ」

 ユウからはまったくと言っていいほど恥じらいがなかった。

「そういうことじゃありませんっ! 服を着てくださいっ!」

 ツバサが服を着るよう必死に訴える。

「そなたみたいに貧相な身体なら、『キャー』とか『バカぁー』とか叫ぶかもしれませんが、わたくしは気になりませんわよ」

 ショウは、ツバサが下着姿になった時の会話を思い出した。まったく同じセリフである。やっぱりユウはツバサのことをよく知っているんだなと感心している。

「そ、そんなこと。言って無いですっ!」

 ツバサが図星を指摘され激高した。

 一方、トウカは二人のやり取りに唖然となって口をポカンと開けているだけだ。

「そこの、可愛らしいお嬢さんは、どなたですの?」

 いよいよトウカがユウに目を付けられてしまった。

「あっ……、あの……」

 トウカの顔が引きつった。先ほどの戦闘で躊躇うことなくツバサを吹き飛ばしたユウが怖いようだ。

「トウカさん、気を付けてっ!」

 ツバサがトウカにアドバイスをする。だがしかし、何を気を付けるのかは分からない。ツバサのアドバイスには重要の情報が抜け落ちている。

「そう、トウカって子なのね。雑魚のお友達かしら?」

 トウカが首を傾かしげた。雑魚が誰を表しているのか理解できていないようだ。

「もう、私のことを雑魚って呼ばないでくださいっ!」

 トウカが『雑魚』の正体に気がつく。ツバサのことを言っていたと。トウカは先ほどの戦闘で、ツバサの強さを知っている。そんなツバサを雑魚扱いするユウに唖然とするしかない。

「あの……、あの……」

 トウカは、ツバサを雑魚扱いするユウに、さらに恐怖しているようだ。

「ユウさん、早く服を着てください。あと、その杖はショウ先輩のですよね? 早く返して上げてください」

 ツバサは今度はユウの持っている炎の杖を指差し、指摘した。

「この杖はわたくしのですわよ」

「違いますよっ! それ、私がショウ先輩にプレゼントした杖ですっ! 間違えるなんてありえませんっ!」

 数ヶ月ほど前のことだ。ショウは初めて剣騎士ツバサに会った時のことを思い出した。炎の杖をドロップしようとダンジョンに篭っている時にツバサのギルドのトラブルに巻き込まれてしまった。トラブルは解決できたものの、炎の杖のドロップは適わなかった。その時にツバサに貰ったのが、この炎の杖だった。

「ショウ様に頂いたのですわ」

 ユウが炎の杖を抱きかかえ、頬ずりしていた。

「キィー」

 ツバサは思い出の詰まった『炎の杖』が取られてしまったことに奇声を上げて抗議している。

「わたくしの杖ですわ。トウカ、お揃いですわね」

 事情を知らないユウは自分の物と言い張っていた。そして、トウカの炎の剣を見てお揃いだと言い始める。ユウはトウカを仲間に引き込もうとしているようだ。

「私だって、私だって……」

 ツバサは自分だけのけ者になって悲しそうだ。

「それよりユウさん、早く服を着てくださいっ!」

 ツバサがユウに服を着るよう促がす。話しを逸そうとするのに必死のようだ。

「わたくしは、ショウ様に見てもらえて幸せですわ」

「それがダメなんですっ!」

 ツバサはユウに服を着せるのを諦めたようで、地面に寝ているショウの後ろに回りこむと両手でショウの目隠しをした。

「見ちゃダメですっ! 不潔ですっ!」

 ショウの後頭部はツバサの双丘の狭間に固定された。ショウは顔を赤らめて双丘を堪能する。

「それより、ユウさん。どうしてここにいるんですか?」

「ショウ様がピンチの時に駆けつけられるように、指輪に術が施してありましたのよ」

 ユウが指輪の話をし始めると、ツバサがショウの指先に視線を移した。

「あっ! 指輪が無くなってるっ!」

 ツバサが指輪が無いことに気が付き、笑みを浮かべた。

「あっ、そうだっ!」

 そして、ツバサは何かを思い出したように発言した。

「トウカさん、ちょっと代わって」

 ツバサがトウカに代わるようお願いする。ショウの目隠しはトウカに託された。トウカの両手がショウの目を隠し、トウカの双丘に後頭部をうずめることになった。ショウは、これが丘の大きさの違いかと後頭部で確認していた。こっちのほうが断然柔らかかった。

 ツバサはアイテムボックスをあさっていたが、目隠しをされているショウには何も見えていない。

「あったっ!」

 ツバサは何かを探し出したかのようで、声を発した。

 ショウは何も見えていないが、左手を誰かに掴まれる感覚が分かった。そして、薬指に冷たい何かが通された。

「おい、誰だ? 何をしている」

「ショウ先輩、指輪ですよ」

 ツバサがショウに指輪を付けた。

「それって、今朝言っていた指輪のことか?」

「ショウ先輩、正解ですっ!」

 ショウは麻痺で不自由な右手を動かし指輪を外そうとした。

「ツバサ、指輪が外れないんだが?」

「はい、それは祝いの指輪ですから」

「呪いの間違いじゃないのか?」

「いいえ、祝いですっ!」

「ところで、指輪の効果は何なんだ?」

「はい、秘密です」

 またまた、謎の指輪が付けられたところで、ミサキとトモが戻ってきた。

「ウイルスの駆除は終ってたよ。これで、元の世界に戻れるよ」

「そうか……」

「それにしても、どうしたらこんな状況になるのよ」

 目隠しをされているショウ、ショウを抱えるトウカ、ショウの左手を取り頬ずりするツバサ、下着姿で仁王立ちのユウ。おかしさ極まりない状態だ。

「ハーレム、楽しそうだね」

 ミサキがそういうと、リアルの世界との交信を始めた。

 また指輪に振り回されるであろう。ショウは少しばかり笑顔であった。 


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