表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/257

39話 第六章 第一節 戦闘

 第五サーバー、草原の国。その国はてし無くと広がる草原の中に栄えていた。栄えているとは言え、とても立派と言える所ではない。国と言うより村と言ったほうが的確なのかもしれない。建物は三角錐さんかくすいの形をしたテントがいくつも並ぶ程度で、城壁と呼べるような代物はなく、木の柵で村の周りが囲われているだけに過ぎない。とても簡素かんそなものだけだ。そして時間は夜、広い空には一面を覆う星空が広がる世界だ。


 ショウはゲートを潜り初心者専用のエリアに初めて踏み入れることとなった。


「ショウ先輩、いらっしゃい」


 先に到着していたツバサがポニーテールをフワさせて出迎えた。


「ツバサ、危険は無さそうか?」

「はい、今、ここでは戦闘は行われては無さそうです。ただ……」


 ツバサは村の外を指差した。指差す方向からは剣を交える音が幾重いくえにも聞こえてきた。


「ショウ君が、トモと二人きりでイチャイチャ(・・・・・・)してるから、自体は深刻になってるよ」


 ミサキの発言でトウカとツバサの目が細くなる。視線の先はショウだ。


「あんたは、いつも目を離すとそうなんだからっ!」

「ショウ先輩? ダメですよー」


 トウカもツバサも目が笑っていない。ショウがミサキに目をやると、やはりミサキはニヤ付いている。


「おい、ミサキ。何もなかったぞ。すぐ来ただろ?」


 ショウは、弁明べんめいを述べるがミサキは何も答えない。トウカとツバサの疑いの目は直ることがなかった。


「で、既に戦闘が始まってるんだろ? 援護に行くべきじゃないのか?」

「ええ、すぐに行ったほうがいいね」


 ミサキがすかさず答えた。村の外れからは剣を交える金属音はまない。


「じゃあ、全員で突撃だ」


 ショウが提案すると、他の仲間も頷く。そして、一行は戦闘が行われているであろう場所へと駆け出した。


 ショウ達が、戦闘地域を視界に入れる。そこには片手に剣を持つゴブリンの大群が村に押し寄せているのが分かった。戦闘はまだ村の柵の外ではあるが今にもゴブリンの軍勢が村に入り込みそうになっている。


 そしてさらに近づいてみると、ショウは唖然とした。戦っている多くが村人のようであった。普通なら剣や盾を持ち戦闘するはずだが、ここで戦闘している人の多くは、くわであり、スコップであり、はたまたピッチフォークなのだ。戦っているそばでは、多くの村人が倒れている。


 戦場において真っ先に倒れるのが兵士だ。兵士が倒れた後、村人が各々の武器を持ち防衛に当たっているのが手に取るように分かる。


「おい、ミサキ? 結構不味いことになってないか?」

「そうね。何とか村を守らないとね」


 ショウは作戦を指示した。


「おい、ミサキはそこの矢倉やぐらに上がって弓で援護を」

「分かったよ。足元に敵を近づけないでね。逃げ道なくなっちゃうから」


 ミサキはショウの指示に従い、矢倉に登る。


「トモは、回復アイテムで村人の回復を頼む」

「分かったよー。じゃあ、ボクは先に行くね」


 トモが負傷兵に駆ける。


「ツバサは、門の右側を頼む」

「はい、ショウ先輩。行ってきます」


 ツバサは、斧を構え飛び出す。


「トウカ、お前はオレと一緒だ。門の左側の援護だ」


 トウカが頷き、二人一緒に門を出た。


 門の外にはゴブリンの大群が。ショウとトウカが対峙する。


「トウカ、敵の強さが、まだ分からないから後ろで待機な」


 ショウが今まで戦ったことのない未知の敵。強さが把握できない間はトウカには戦闘をさせたくなかった。


「うん、分かったわ。無理しないでよ」


 ショウが先頭に立ち、トウカが後ろで待機する。


「よし、まあ、やってやるか」


 ショウ自身、今まで対峙したことの無いモンスター。だが、所詮しょせんは初心者サーバー用に作られた敵だ。それほどの強さで無いのは明白であった。しかし、相手の強さが分からない以上、トウカに先陣を切らすのをためらった。


 第一レベル探知魔法――ステータスサーチ――


 ショウが魔法を唱えると、ゴブリンのデータが表示されていく。ボスや自分より強いキャラに対してはステータスが表示されないこともあるが、ゴブリンに対しては効果があったようだ。


「ふん、大して強いわけじゃないんだな」


 ショウがそう呟くと、一体のゴブリンの元に駆け出した。ゴブリンは村人と鍔迫つばぜり合いをしていた。その横からゴブリンに斬りかかる。


「とうっ!」


 ゴブリンはショウの大剣の一撃で両断され、光となって消えた。


「トウカ、お前の攻撃力でも十分戦えそうだ。援護を頼む。一対一で戦えよ」


 ショウは先ほどの一撃で、敵の強さを理解した。ステータスは把握してはいたが、実際に戦うまでは分からないことも多い。ショウは実際にゴブリンと戦うことにより相手の力を把握する。そして、ゴブリンの戦闘能力はダンジョンにいたトカゲのモンスターよりずっと弱いものだった。


「分かったわ。囲まれないように気を付けるわ」


 トウカはゴブリンの元に駆け出して、炎の剣で斬撃を加えようとした。


「とりゃー」


 トウカは叫び声を上げながらゴブリンに斬り付けたが、ショウの様に一撃とはいかず、すぐさま二撃目を繰り出す。


「倒せたわよ」


 トウカの二撃目がゴブリンに当たると、ゴブリンは光と共に消滅した。


「よし、トウカ、なかなかやるな」

「まあね」


 トウカは慎重に一体一体、敵の相手をしていく。そう、囲まれないよう注意して。


「あんた、敵が多過ぎよ。魔法で蹴散けちらせないの?」


 トウカはショウが魔法を使わないことが気になっているようだ。


「いや、魔法でもいいんだが、村人が散り散りになってて、敵だけを捕捉できない。今は、一体一体倒すしかない」


 ショウも、魔法の使用を考えていた。しかし、この状態で魔法を使えばフレンドリーファイヤーになるに違いない。絶対的なピンチでないのであれば、剣での戦闘が有効であると考えていた。


「そうなのね。分かったわ」


 トウカも納得し、敵と戦い続けた。そして、多くの戦果をトウカは上げていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ