3話 インターバル 第一節 スパイの影
キャスター付きの長机がいくつも並べられているオフィスビルの一室、入り口には作戦部会議室の文字。長机さえ移動させれば広い空間が作れるところを見るに、多目的な部屋として使われるのであろう。ホワイトボードの前の椅子に腰かける男性の姿がある。中年のスーツ姿の男がは何かを考えている様子だ。
すると部屋の扉がノックされ扉が開かれる。若いスーツの男性が部屋へと入ってきた。
「ウイルス型モンスターの活動は順調か?」
「そ、それが……。報告があります。ウイルス型モンスターの討伐部隊が編成されている模様です」
話し方からするに部下であるようだ。上司に指示を仰ぐかのように報告を始めた。
「それは、まずいな。上からの命令が来ているのか?」
中年の男は、顔をしかめ言った。
「はい、作戦内容かこちらです」
若い男が出した書類が机に置かれと、中年の男がペラペラと捲り確認する。
「そうか、折角情報を流したのにな。もう対応されるとは。今のところ上手く行っていたんだが。ここでウイルスが駆除されては……」
中年のスーツの男が腕を組み考えている。
「よし、ウイルスの討伐部隊を消すことにしよう」
中年の男は迷うことなくはっきりと言い放った。
「しかし、討伐部隊ですが、うちの作戦部しか名簿で出ていないようです。作戦部に関しては消去することが可能ですが……。システム部から派遣される予定の二名が不明のままです」
若い男の口ぶりからすると、作戦部とシステム部の合同でのウイルス討伐部隊の編成のようだ。
「何! 忌々しい! 仕方が無い、うちの作戦部だけ潰そうとしよう。どうせシステム部二人でウイルス型モンスターの討伐など出来ないからな」
「ですが、万が一のこともありますので……」
「そうだな、厄介なことになった。システム部め、情報を出さないとはいい度胸だっ!」
中年の男は拳を握り締め机を叩いた。
「今できることは名簿に載っている作戦部のメンバーの消去だけです。作戦開始時に、作戦部のメンバーが消去されるプログラムを入れておきます。よろしいですか?」
中年の男が頷く。顔が正に悪代官だ。
「あぁ、うちの作戦部は潰せ。システム部は、致し方ない。あと、装備も消去させろ。特にマントだ! 特別なマントがある。それが残っていると面倒だからな」
中年の男はマントを強調するかのように大きな声を張り上げた。
「はい。では、準備をいたします。マントに関しては確実に消去させます」
若い男は会議室を後にした。