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33話 第五章 第六節 狙われたトウカ

 トウカは宿屋への帰路に付く。夕暮れ時の薄暗い路地を急いで帰っていた。

「おい、お嬢ちゃん、久しぶりだな!」

 トウカの目の前には、以前、トウカを拉致した盗賊達が立ち塞っていた。数はおよそ20人。

「何よ、また、あんた達なの!」

 トウカは、鋭い目をして盗賊を睨んだ。

「ちょっと、付き合ってもらおうか?」

 盗賊が一歩、トウカへと歩み寄る。

「こっちに来ないで」

 トウカが腰に下げた炎の剣を抜く。トウカは強気だ。剣も新しくなっている。何より魔封石の残りだってある。魔封石に頼れば盗賊くらいなら簡単に殲滅できるはずだ。

「いや、お嬢ちゃんにも用があるんだが、金も置いて行ってもらわないとな」

 盗賊の目的はトウカの拉致とお金のようだ。トウカが大金を所持していることを盗賊達は何故か知っていた。

「準備で金が無くなったからな」

 盗賊は準備までしてトウカに近づいたようだ。

「渡すわけないじゃないっ!」

 トウカは、一人でお遣いに行くと言った以上、ここでお金を奪われる訳にはいかない。

「まあ、いい。奪うから問題ない」

「あんた達、怪我しても知らないわよっ!」

 トウカが盗賊達に脅しを掛けたが盗賊達は引く様子がない。

「まぁ、威勢が良い、お嬢ちゃんだこと」

「お頭かしら、もうやっちゃいましょうぜ」

 盗賊達が余裕の表情を見せる。そんな盗賊達におくすること無くトウカが睨む。最後の手段だと言わんばかりにアイテムボックスから魔封石を取り出し、握り締めた。

「あんた達、そんなに痛い目をみたいの?」

 トウカはそう言うと、魔封石を盗賊達に投げつけた。


 第五クラス炎魔法――ファイアーストーム――


 魔封石が割れると、中から炎の渦が立ち上った。魔法クラス5、ファイアーストーム。最大レベルが40になった世界では強力すぎる魔法だ。そんな魔法が直撃すれば無傷では済まないだろう。

「おい、こっちも使うぞ」

 盗賊の一人が仲間に合図をした。すると、盗賊達も魔封石を取り出し足元に投げた。


 第四クラス補助魔法――マジックプロテクト――


「お嬢ちゃん、残念だったな」

 盗賊達の投げた魔封石が地面で割れると魔法が発動したようだ。盗賊達の身体が光始めた。薄い膜のようなものが張られているように見えた。

「これは、マジックプロテクトのクラス4が入っている魔封石だ。クラス5程度の魔法なら効かないさ」

 盗賊たちは不敵な笑みを溢した。

「この魔封石にいくら掛かったと思ってるんだ? お嬢ちゃんのお金貰わないと割りに合わないんだよ」

 盗賊達は、トウカが魔封石を売りに出しているのに気が付いていたようだ。売却まで時間が掛かってしまったのが不味かった。盗賊に準備の時間を与えてしまったのだ。しかも、トウカの持つ魔封石のレベルまで知られていた。クラス5の魔法対策までされてしまったのはマズい。

「まぁ、あんな目立つ所でギャラリーまで集めて商売してるんだからな、狙われて当然じゃないか?」

 盗賊はニヤリと笑い、トウカに話し掛ける。

 トウカは肩を震わせて怯えた。魔封石の残り一つ。しかし、魔法が効かない相手では意味がない。

「えっ…、何で、いつもいつも……」

 泣きそうなトウカに盗賊達が近づいてきた。

「お嬢ちゃん、観念したか?」

 不適な笑みを浮かべながら盗賊達が足を進める。

「今度こそ、役に立ちたかったのに……」

 トウカはもう何も考えられなかった。最初に盗賊に拉致された時もそうだ。ダンジョンの時もだ。常にショウに助けられていた。もはや、トウカは剣を持つ手にも力が入らず、腕を下ろす。その時だ、トウカの右手首に何かが当たりハッとなる。

「そういえば、あいつがお守りをくれたんだった……」

 藁わらにもすがりたい思いのトウカは、腰に結ばれた巾着袋を開いた。そこには一つの魔封石が入っていた。

「お嬢ちゃん、また魔封石かい? そんなの効きはしないぜ」

 トウカは、何かを悟ったかのような、キリっとした顔になった。ショウに貰った魔封石を信じているようだ。

「あんた、これがダメだったら怒るわよっ!」

 トウカはショウの助言の通りに足元に魔封石を投げつけた。


 第九クラス炎魔法――ファイアーウォール――



 魔封石が割れると、炎の壁が現れた。そして、炎の壁がトウカをグルリと囲った。まるでトウカを城と見立てた城壁のようだ。炎の壁は意思を持っているかのようにトウカを懸命に守る。そしてこの炎は、先ほどの魔封石に入っていたファイアーストームより遥に明るく、そして熱かった。

「何これ……。何なの……」

 トウカは知らなかった。それは今までに見たことの無い上級魔法だったからだ。ショウから貰ったお守りはクラス9の魔法『ファイアーウォール』が詰まっている魔封石だった。

 トウカを懸命に守ろうとする炎の城壁は少しずつ広がり、盗賊達を飲み込もうとしていた。

「お嬢ちゃん、苦し紛れにまだやるのか?」

 段々と広がる炎の城壁が盗賊達の元へと迫った。盗賊の一人が炎の壁に触れた。

「マジックプロテクトが効かないのか! うゎー」

 盗賊たちが炎から逃げ惑う。切り札であったマジックプロテクトが通用しないのであれば作戦は失敗だ。

「……」

 放心状態のトウカがその場にしゃがみ込んだ。


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