30話 第五章 第三節 バイト
「ああ、面倒臭い」
ショウは黙々と魔封石に魔法を詰め込んだ。ショウの机の上には魔封石の山と大量の魔力回復用のポーションが並べられていた。まるで、受験生が栄養ドリンクを飲みながら勉強しているような光景だ。
ショウが込ているのは、火炎魔道士がレベル50相当で使えるようになる――ファイヤーストーム――。クラス5の炎の魔法だ。炎系の魔法が得意なショウにとっては楽なことではあった。しかし、数が膨大だ。
「いくつ作ればいいんだ?」
ショウは、独り言をブツブツ言いながら魔法を込める。
「そういえば、あいつら買い物に行ったんだよな。無駄遣いしてなきゃいいんだが……」
トウカとミサキは買い物に行っている。ミサキは将来、旦那をATM扱いするんじゃないかとショウは思った。
「お待たせー、魔封石買って来たよー」
トモが帰ってきた。その手には大量の魔封石が抱えられていた。
「お帰り。サンキューな……、はぁー」
ショウはお礼を言ったものの、仕事が増えることに落胆した。
「なぁ、トモ? 魔女の石造の件だけど、情報は掴つかめたか?」
「それらしいのは見つからないの。ルートに乗ってない可能性もあるから、お店を探さないとダメかも」
「隣国はどうなんだ? 他の町の可能性とか」
「他の町では石造ブームは起きてないみたい。何でここの町だけなんだろうね?」
隣国への行き来はイベントが行われている時だけだ。ここ数日、隣国開放のイベントは行われていない。そのためプレイヤーが隣国にいないが為に石造が無かったのだとショウは察さした。
「ブームってヤツは、波及していくものなんだろうな。これからなんじゃないか?」
石造はブームでも何でも無い。NPC化しているトモに説明のしようがないためショウは言葉を濁した。
「そうかなぁ? じゃあ、今のうちに石造集めたら儲かるかな?」
「儲けの前に、まず魔女の石造をだな」
「そうだね。でも、商人ルートには乗ってないんだよー」
トモは、すぐに見つかったツバサとは違い、ユウ探しには苦戦をしているようだ。
「そもそも、第一サーバーにあるかも分からないからな。無い可能性の物を探すの大変だよな」
ショウは悪魔の証明と言う言葉を思い出した。無いと証明するには、全数調査しなければならないと言う話。
「ボクの情報網から外れてるだけだったらいいけど。だからお店を回ってくるねー。あっ、そうそう、これがクラス5の魔法の相場表だよー」
トモはショウにメモを渡した。
「一番上が相場の値段、真ん中が、希望の金額だよー。下のが下限値だから、それより下がるなら別の店がいいよー」
トモは、メモの説明をした。
「助かるよ。さすが商人だな」
「へへっ、という訳で石造探し行って来まーす」
褒められたトモは嬉しそうに、ユウの石造を探しに部屋を出て行った。
「やれやれ、仕事、仕事」
ショウは黙々と魔封石に魔法を詰め込んだ。魔力回復ポーションを飲みながらの作業だ。