28話 第五章 第一節 店の石像
「あぁ、戻ってきたわね」
トウカが第一サーバー、はじまりの大地に帰還すると、まるで故郷に凱旋でも果たしたかのように喜び伸びをした。
「初めての天空界はどうだったか?」
ショウは、トウカに質問した。
「悪くなかったわよ」
「お前は、相変わらず感動が無いヤツだな。普通あんな所、お前のレベルじゃあ行けないんだぞ」
ショウが苦労してやっと行けるようになった天空界。運営のチートで簡単に行けてしまったトウカ。二人の天空界への思いに差が出るのも納得だ。
「じゃあ、宿屋に戻るか?」
ショウが他の三人に言う。トウカとトモが頷く。一人、頷ずニヤニヤするのはミサキだ。
「おい、ミサキっ! また何か企んでるのか?」
ミサキはショウに指摘されると、口笛を吹きながらそっぽを向く。間違えなく何かを誤魔化ごまかした。そんな姿を見たショウからは溜息が溢こぼれる。
「じゃあ、行くぞ」
トモを加えたショウ達4人は宿屋に向かうことにした。途中で見かける露店には石造が多く並べられていた。今更ながら石像に気が付く。気にし出すと意識してしまうカラーバス効果がまさに現れる。今日のラッキーカラーが赤と言われれば、町中に溢れる赤色を意識してしまうと言うあれだ。
「意識してないと気が付かなかったが石造って結構売ってるんだな?」
ショウはミサキに話しかけた。
「そうね。ショウ君に選んであげるよ」
ミサキがそう言うと、スキップしながら露店に向かう。露店に着くとミサキが石造の品定めを始めた。
「おい、ミサキ? どういうことだ? 復活は誰でも良い訳じゃないって言ってなかったか?」
ショウの話しをミサキは聞き流した。聞こえないふりをする。
「この子、元に戻すと可愛いんじゃない?」
ミサキは、短剣を装備した布の部分の少ない女盗賊の石造を指差した。
「ミサキ? 何が言いたいんだ?」
「こっちは、どう? ショウ君は胸の大きい子の方がいいかな? トウカちゃんほどじゃないけど」
ミサキが指を差したのは、胸の大きい魔法の杖を持った魔道士と思われる石造を指差した。
「だから、ミサキ? 何が言いたいんだ?」
ショウは少し怒りながら、ミサキに言った。
「ん? ショウ君が困ってる姿を想像したら、面白そうだからだよ」
やはりミサキの性格は歪んでいるようだ。そして、ショウがミサキの知らないツバサとユウという女性キャラを思い出し、憂鬱になった。もしミサキにツバサとユウの存在に気が付かれたら、それこそいいおもちゃになる。
「ちょっとっ! 何デレデレしてるのよっ!」
トウカがショウの後ろから声を発した。
「おい、トウカ。お前は何か勘違いしてるぞ。そんなことを言うとミサキの思う壺に……」
話しを聞いていたミサキはニヤ付いていた。
「何よっ! 変態っ!」
トウカにとってのショウの悪者評価は鬼畜から変態に降格したようだ。
「大した物は無かったわね」
ミサキはがっかりすることなく言った。暇潰しくらいにしか考えてないようだ。
「じゃあ、次こそ戻るぞ。いいな、ミサキ?」
ショウが名指しする。ミサキはペロッと舌を出した。やり過ぎたと言わんばかりに。