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26話 第四章 第三節 発見

 ショウ達三人が、8箇所目まで調査を進めていた。しかし、手がかり一つ得られず、ただただ、やる気だけが削がれていく。

「ちょっと、あんた、全然、何もないじゃないのよっ!」

 何も見つからない調査に、トウカが苛立つ。

「だから、留守番するように始めに言ったんだぞ」

 ショウは確かに留守番を提案していた。しかし、天空界へ行けないことを理由にしていたにすぎない。決して調査が暇だからとは言っていない。今となっては、どちらの理由でも構わなかった。

「わ、分かったわ。次に行きましょっ!」

 ショウに留守番の提案をされたことを言われて、言い返すことの出来ないトウカは渋々承諾した。

「で、次はあそこの建物の中だな」

 ショウが指を指し歩きだす。トウカとミサキが後に続いた。

 ショウが建物の入り口を潜る。すると、今までとは別の光景が現れた。

「ちょっと、あんた見て、あれ石造よね?」

 トウカが口を開いた。女性をモチーフとした石像は部屋のど真ん中に置かれていた。観賞用と考えれば部屋の隅すみに置くのが普通だが、そう言う目的ではないようだ。

「そうだな。石造だな。PKした時は無かったと思うが……」

 ミサキは石造の近くまで行き観察を始めた。石造に近づくと、それは女性の物であることが分かった。とても精巧に出来た石造は今にも動きそうな気すら感じられる。そして、女の石造は下着姿をしており、製作者は余程よほどの変態ではないかとショウは思った。

「これ、トモだ……」

 ミサキが驚きの表情を浮かべながら、石造を見て呟いた。ショウは始めは石造の製作者の名前を呟いたのだと思ったのだが、そうではないことに気が付くこととなる。

「この石造、私の同僚のトモよっ!」

 ミサキの言葉で分かったことは、トモと呼ばれる女性が石になっているということだった。

「なぁ、ミサキ。運営はレベル40を超えると行動不能にするって言ってたんだよな?」

「そうよ」

 ミサキが頷いた。

「まさか石にすることが、行動不能にする方法だったのか?」

 ミサキは顎に手をやり考えていた。

「方法までは、聞いていないよ。でも、石にすることで行動不能ってのは理に適かなってるわね」

「理に適うってるってのは?」

「石にすることで、キャラのデータをそのまま維持できるよね? で、町にあってもNPCが話しかけたりすることがないし、ダンジョンで石になっててもモンスターの攻撃を受けないよ」

「運営が考えることは一味違うってことだな」

「そうよ。私達運営は神よ」

 神と言うより怪物メデューサじゃないかとショウが思った。

「で、この石造をどうする?」

 ショウはミサキに質問した。

「うーん、『偽装マント』を掛ければ元に戻るかもしれないよ。ちょっとショウ君、マント貸して」

 ミサキの口ぶりからすると石化解除の確証がある訳ではないようだが、ショウとしても試す価値があると思いアイテムボックスからマントを一枚取り出し、ミサキに手渡した。

「じゃあ、ショウ君。私がマントを掛けるから、石造の前に立っててもらえるかな?」

 ショウは、何も疑わずミサキの言う通り石造の前に移動した。ミサキの顔がニヤけていることに気が付かなかった。

「じゃあ、マントを掛けるよ」

 にこやかなミサキがそう言うと石像の後ろに立ち、マントを掛けた。すると、石造が光りを放つ。そして石の色をした身体はみるみるうちに生物の色へと変化する。ショウは石造が生物に戻る瞬間をまじまじと見ていた。その生き物に変わった石造は肌色がとても眩しかった。緑色の髪をしたショートヘアーのトモの身体の大部分が肌色であった。

「キミ! さっきの殺人鬼ね!?」

 トモはPK前の記憶を取り戻したようだ。

「いや、すまんな。今、助けに来たところなんだが……」

 ショウは、首を横に向け頬ほほを掻かいた。そのショウの様子を見たトモは自分の状況に気が付いたようだ。

「えっ! ボクっ、服着てない!?」

 このトモって子は、いわゆるボクっ子のようだ。薄黄色の下着姿のトモはその場で踞うずくまると身体を隠した。

「ちょっと、ボクの服、返してっ!」

 ショウがアイテムボックスから慌てて装備を取り出そうとする。しかし、12人分もの装備がある。どれだかわからないショウは、片っ端から服をトモに差し出した。トモの後ろではミサキが噴出しそうにお腹を抱えている。それを見たショウがミサキに嵌られたことに気が付き憤る。一方トウカはというと、トモに早く服を着させようと、女性物の装備を探していた。

「もう、何で、ボクは裸なのよーっ!」

 どう説明していいのかが分からないショウはミサキに話しを振った。

「なぁ、ミサキ。あのトモって子、NPC化してるのか?」

「まぁ、そうだと思うよ」

「じゃあ、今までの経緯とか説明できないよな?」

「そうね。ちょっと席を外してもらう必要があるわね」

 そんな話しをしている間に、トモは装備を見つけ出し服を着た。

「ショウ君、さっきの地図を出してもらってもいい?」

「ん、いいけど、どうした?」

「トモに続きを探させて、その間に3人で作戦会議しましょうよ」

 ショウが頷き、マップを取り出した。そして、マップがミサキに渡る。

「ねぇ、トモ。今、この人たちに協力してもらってるのよ。変態だけど、悪い人じゃないよ」

 ついにミサキにまで変態扱いされるショウだが、話しが拗れるのを嫌い、否定はしなかった。

「そうだよねー。ボクの服を剥ぎ取った人なんだもんねー」

 トモが無事にショウを変態だと認識した。

「まあ、そういうことよ。でも、今は協力してもらってるから敵視はしないでね。軽蔑の目ならOKよ」

 ミサキが敵視は困るが蔑視は良いとトモに告げる。兎に角く、ミサキはショウのことを変態扱いしたいらしい。

「こっちの変態さんがショウ君で、こっちの女の子がトウカちゃんよ」

 トモも自己紹介を始めた。

「ボクはトモでーす。よろしくお願いします。トウカさん、変態さん」

 もう、ショウの名前は変態になっていた。

「で、トモ? ちょっと頼みたいことがあるんだけど」

 そうミサキは言いながら、マップをトモに渡す。

「この点の所に、石造が無いか調べてきてもらえないかしら」

 トモは頷く。

「あっ、ショウ君? ボウガン持ってるでしょ? それトモの装備だから返してあげて」

「ああ、分かった」

 ショウがアイテムボックスからボウガンを取り出して、トモに渡した。トモはボウガンを受け取ると調査のために建物から外に出て行った。


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