194話 第四章 第十二節 お助けカードの価値
ショウとミサキが新聞社の外へ出る。昼を過ぎ傾き始めた太陽が二人の影を少しだけ伸ばした。
「ショウ君どうするのよ?」
ミサキはご立腹の様子だ。何をするのも面倒だと言うミサキ。わざわざ出向いたのにも関わらず、結果は無駄足。しかも、理由が勘違いからと来たとなれば、怒りたくなるのも分からなくもない。
「いや、悪かったな」
ショウが平謝りをする。問題が一つ解決されたと言う安心感しか、ショウの頭の中にはなかったからだ。
「じゃあ、お助けカード追加だからね」
ショウの平謝りにミサキが対価を請求する。いや、精神的な苦痛を感じたと言わんばかりの慰謝料なのかもしれない。
「ちょっと待てよ、そんなにポンポンと追加されてもたまらんぞ」
ショウにとってはお助けカードなどと言う可愛い名前の物ではない。奴隷を使役できる呪いの札と呼んだ方が意味が通る。
「だって、ツバサちゃんに分けないといけないのよ。数集めておかないとなくなっちゃうもの」
「じゃあ、渡さなければいいだろう。何だって、分けてやるんだよ」
昨日の話の流れから、ミサキはツバサにお助けカードを譲ることを約束していた。だから、お助けカードを集めてるのだろう。
「お助けカードって、ショウ君以外にも使えそうだから」
ミサキが不適な笑みを浮かべた。悪いことを考えているに違いない。
「オレ以外にも、そのお助けカードとやらを発行しようって言うのか?」
「違うよ。あくまで発行はショウ君だけ。お助けカードはショウ君を動かすためのカードに過ぎないよ」
「じゃあ、何だってオレ以外にも使えるんだ?」
ショウが単純に質問する。ショウ以外に使えないお助けカードをどうするのかと。
「それはね。あの子達に、お助けカードをあげると、提案するだけだから」
「はぁ?」
ショウが意味がわからないと言わんばかりに、ポカンとした。
「だから、私がお助けカードをあげるからって、あの子達に言うことを聞かせる。あの子達はお助けカードを欲しがるから言うことを聞く。オッケー?」
「オッケーじゃねーよ。結局、お助けカードの効果はオレってことじゃないか」
ショウはお助けカードが誰の手に渡ろうと、結局自分をこき使うカードに代わりがないことに気がついたのだ。
「あら、良い方法なのに」
「あいつらが、お前の無茶な頼みでお助けカードを諦めたらどうするんだ?」
ショウが対価に対して言及した。割に合わなければ引き受けないのが人と言うものだ。
「ショウ君、甘いわね。お助けカードの価値に気がつかないの?」
ミサキにお助けカードの価値と言われてもショウはピンときていなかった。
「だったら、オレ以外のやつでお助けカードを発行しろよ」
ショウがお助けカードに価値があるのなら別の人の分でと、ミサキに提案した。出来ることなら、お助けカードの発行を別の人にしてもらいたいとの思いから。
「ショウ君だから、価値があるんだけど」
ミサキがショウだからお助けカードに価値が出ると言う。まるで有名人のサインと、小物のサインの価値が違うと言いたげに。
「オレのレベルが99だからか?」
ショウだからと言われた理由から、ショウ自身が結論を出した答えがレベルがMAXだと言うことだった。確かに、この強さの奴隷を使役できるのなら価値を見いだせなくもない。
「ちょっと違うんだけど」
ミサキがため息をついた。何やら、別の理由からあの子達がショウを自由に出来るお助けカードが欲しいようだ。
「何が違うんだよ?」
ショウがミサキに質問した時だった。ミサキのフレンドリーコールがなった。
「トモ、分かったのね」
どうやら、少女の居場所が分かったようだ。