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193話 第四章 第十一節 勘違い

 ショウとミサキが太陽が照りつける石畳の上を歩く。もうすぐ例の新聞社だ。


「なぁ、ミサキ。何て言ってやめさせればいいと思う?」

「まぁ、脅してやめさせるのがいいんじゃない? ドスの効いた声で高圧的な態度を取るみたいな」

「そんなので、効果があるのか?」

「なんとかなるんじゃない?」


 ミサキはとにかく楽観的だ。ミサキ自身の運営としての権限があれば、大抵の願いは叶う。今回のこの件であっても、記憶改竄きおくかいざんの奥の手を使いさえすれば、万事解決ばんじかいけつのはずだからだ。


「着いたな」


 ショウとミサキが新聞社へと到着した。ショウは多くの建物が密集するオフィス街からお目当ての新聞社を見つけ出した。二回目なので、どうと言うことはない。あのクソ生意気な編集長がいる新聞社など忘れるわけがなかった。


「じゃあ、開けるぞ」


 ショウはノックもなしに新聞社の扉を開けた。すると建物中からはインキの匂い漏れ出てきた。


「誰か来たのか?」


 編集机に積まれた書物の後ろから声が聞こえる。聞き覚えがあるからに編集長で間違いないだろう。


「ちょっと言いたいことがあって来た」


 ショウがミサキのアドバイスを鵜呑みに、濁り太い声を発した。


「あ? なんだお前は?」


 編集長がデスクを立ち、不満そうな顔つきでカウンターへと足を運んだ。


「今晩、城が襲撃されるから、そこで使われる魔封石を記事にしないでほしい」


 ショウが単刀直入に言う。記事にならなければ、トウカが狙われる心配がない。


「小僧、笑わせてくれるな。今晩、城が襲われるだって? なぜそんな情報を持ってる?」

「いや、それはだな……」


 編集長の眼差しにショウがたじろいだ。未来から来たからだ、などと言ったところで編集長が信じるとは思えない。それどころか電波扱いされかねない。


「私が代わりに説明しましょうか」


 ミサキが助け船を出した。このままショウに話をさせてもらちが明かないからだ。


「なら、そこのお姉さんに聞くとするか」

「えぇ、まず一つ目に、大量のレベル5の魔法の詰められた魔封石が買い占められたこと。新聞社であればそれくらい把握してるはずでしょ?」


 当然トウカが投げた魔封石もレベル5の魔法が入っていた物。訂正させたい記事には|レベル5の貴重な・・・・・・・、と冠辞かんじまで付けられていたのを思い出す。新聞社の人間が魔封石をマークしていないとは思えなかった。


「あぁ、当然知ってるさ。えーと……、何だったかな。その……」


 編集長が口ごもる。もしかすると魔封石の件は本当は把握していない特ダネなのかもしれない。


「赤い髪の女の子が、魔封石使ったこは知っていて?」


 ミサキが確信に迫る。トウカが投げた魔封石の件を知らないのであれば話が早い。穏便に済ませそうだ。


「赤い髪って……」


 どうやら本当に編集長は知らないようだ。では、あの記事はどこから沸いたものなのか。


「ショウ君、魔封石の件、あのおじさん知らないみたいじゃない?」

「いや、ちょっと待てよ。トウカが魔封石を投げたのって、いつだった?」

「あれは、初心者サーバーでウイルス駆除した次の日よ。その時も確かウイルス駆除だったはず」

「オレ達が、ロール……。RBだっけか。RBしたのって初心者サーバーでウイルス駆除した翌日の朝だったよな」

「ショウ君、もしかして勘違いじゃないの?」

「たぶん、そうだ。これならトウカが記事にされることがなくて、よかったな」


 ショウが頭をポリポリ掻いた。実に恥ずかしい。


「あんたら何をコソコソ話してるんだ」


 ショウとミサキのヒソヒソ話に編集長が割って入る。


「いや、オレ達の勘違いのようだ」


 ショウがそういうと新聞社を後にした。

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