192話 第四章 第十節 明日の予定
「じゃあ、頼むよ。トモ」
ミサキがトモに用件を伝えると、回線を切断した。
「どれくらいで分かるんだ?」
「今、話したところよ。検討もつかないよ」
簡単に解決するのであればそれに越したことはない。しかし、ミサキの言うとおり今話したばかりのことだ。しばし時間が必要だろう。
「じゃあ、オレ達は待つしかないのか」
ショウが貧乏揺すりをし始めた。あまりよくない癖だ。
「焦ってもいいことないよ」
「焦らずにいられるか」
ミサキにとっては所詮は仮想世界。NPCの死などデーターの破損に過ぎないのかもしれない。しかし、ショウにはそうとは思えなかった。自分が死ねない世界。NPCにも死んで欲しくなかった。
「オレ達のできることは何かないのか?」
「そうね。待つことも必要じゃない?」
ミサキがそっけなく答えた。
「ショウ君、他には何かやっておかないといけないことはある?」
「あぁ、そうだな」
ショウが眉間にシワを寄せ、考える。忘れていることはないかと。
「あぁ、そうだ。明日の問題も解決しないといけないか」
「明日って?」
ミサキがすかさず質問した。今、話をしているのは、今日の城攻めをいかに防ぐかだった。それなのにショウが次の日の予定を口にし始めた。
「今日、仮に城攻めを止めることが出来たとして。明日、トウカが新聞社の連中につきまとわれる未来は変わらないんじゃないかと思ってな」
「あの、魔封石の犯人みたいに書かれた記事のこと?」
ミサキが記憶を呼び起こした。城攻めに使用した魔封石とトウカの持っていた魔封石が同一だったという話のことだ。記事には大層悪く書かれてあり、トウカが町を歩くこともままならなかった。
「その記事のことなんだが、いい方法はないか?」
「一番手っ取り早いのが、魔封石を使われる前に回収すること」
ミサキの意見はもっともだ。魔封石が使われなければ、城の被害は少なくて済む。そして、トウカも悪者にならない。一石二鳥とはこの事だろう。
「だけど、魔封石を探すのは不可能なんだろ?」
「えぇ、そうね」
ショウが、腕組みをして悩む。いい方法がないものかと。
「だったら、記事が出ないように新聞社を潰すか?」
「あら、トウカちゃんの話になると、無茶しようとするね」
ミサキがクスクス笑う。何がおかしいのだか。
「仲間があんなことになるのは御免だからな」
「あら、ユウちゃんや、ツバサちゃんでも?」
「当たり前だろ」
ミサキがハァっとため息をついた。何か言いたげだ。
「ショウ君の言う通り、新聞社に乗り込んでみようか? 何かいい方法が浮かぶかもしれないし」
「じゃあ、新聞社に行ってみるとするか」
そういうとショウが席を立ち、食事の会計をする。ミサキは財布を出さないどころかスタスタと店の外に行く始末。そんな姿にため息をつくショウであった。