186話 第四章 第四節 映らぬ視覚情報
ゲートの前でしゃがむミサキが立ち上がった。どうやら解析が終わったようだ。そんなミサキにショウが声を掛けた。
「どうだ? 居場所は分かったのか?」
「まぁ、接続は出来たって言えばいいのかな」
ミサキが曖昧な答え方をする。返答から察するに居場所までは分かっていないのだろう。
「接続出来たって言うのは、どう言うことだ?」
ショウがミサキに問う。分からないことを潰していこうとの考えからだ。
「視覚データのジャックには成功したよ」
そういうとミサキがコソコソと腕に現れたディスプレーをショウに見せた。
「真っ暗じゃないか? 壊れてるんじゃないか?」
ショウが疑うのも当然だ。ショウが見ようとしたディスプレーには何も写らず、暗いまま。壊れたテレビを見るに等しい。
「失礼ね。神ミサキに不可能はないのよ」
神と言う割りに、結果が伴っていないことに、ショウが不満そうにする。しかし、愚痴を言えば、神の怒りに触れかねない。ここは下手に出て聞き出すしかない。
「オレにはよくわからないんだが、真っ暗な画面で成功なのか?」
「ショウ君、バカなの? 昨日のこと覚えてないの?」
ミサキのバカ発言に、ショウの目尻がピクリとした。捜索を頼んでいる以上、仕方がない。ここは我慢だ。
「昨日のことってなんだよ」
「昨日話したでしょ? 視覚の情報がそのまま送られてくる話。たまたまお風呂入ってたらって話」
ショウが昨日のことを思い浮かべた。執事姿のツバサが手で透けないように隠そうとする図だ。
「ショウ君、今、いやらしいこと考えてたでしょ? エッチ」
「いやらしいとか言うな」
ショウが文句を言う。いやらしいとか、エロいとか言われたくない。そんな年頃だ。
「で、真っ暗の正体は何なんだよ」
「寝てるんじゃない?」
「は?」
ショウが飽きれ顔をする。さっさと結論を言わないミサキに腹が立つ。今までのやるとりがすべて無駄になった。ミサキが言うには、どうやら、視覚データ取得先が目をつぶっているからだと。確かにそれならブラックアウトしていても不思議ではない。レンズにカバーがしてあれば、ファインダーを除いても真っ暗で当然だからだ。
「それで、調査の方は……」
門番が心配そうにショウとミサキに声を掛けた。門番からすれば、進退が決まってもおかしくない案件だ。心配になるのも無理はない。
「そうそう。鍵がダメね」
不意に変わった話題にミサキが淡々と答えた。
「鍵ですか……」
「そう、この鍵じゃ、セキュリティ的に問題だから、変えましょう」
そういうと、ミサキがアイテムボックスを漁り始めた。