180話 第三章 第三十話 お助けカード
「それで、私の居ない間に何が起こったのか整理しましょう」
ミサキが会議の始まりを告げた。
「オレは、あの子を探してたが」
「ショウ先輩! あの子って誰ですか!」
執事服姿のツバサがすごい剣幕でショウに迫った。女の臭いを嗅ぎとったようだ。
「ツバサちゃん? その子はね、ショウ君がお気に入りの女の子の事よ」
ミサキが真剣な顔で言おうと努力が見られる。しかし、広角がヒクついている。内心笑ってるのだろう。
「ショウ先輩! 誰の事ですか!」
ツバサがアイテムボックスに手をやっている。おおよそ斧が出てくるのだろう。このままではショウの首が宙を舞う。
「誰って言われてもな」
ショウがツバサの殺気にたじろぐ。
「これくらいの女の子よ」
ミサキが胸の高さほどに手をやり身長を表した。
「子供?」
ツバサが首を傾げ不思議そうにする。
「そうよ、ショウ君はロリコンなの」
「おい、ミサキ。何言ってるんだ。別にロリコンなんかじゃねーよ」
ショウが全力で否定した。ミサキには今まで散々な言われようをしていた。鈍感やエロい、鬼畜に変態。後半はトウカに言われたものかも知れないがすべてはミサキに原因がある。それに加わりロリコン扱い。否定したいに決まっている。
「そう? ロリコンの称号、良いと思うけど。子供くらいあやせないと。イクメンって言葉があるくらいよ。ツバサちゃんも子供好きの旦那さんのほうがいいでしょ?」
ミサキがツバサに話を振った。
「子供……、子供。はぅ……」
ツバサは顔を真っ赤にし頭から湯気が吹き出す。思考停止。オーバーヒートした。
「で、その子の件だが……」
ショウが話を戻した。ツバサがオーバーヒートする時はろくなことが起こらない。経験上無視することにした。
「分かってるわ。ショウ君の成果はゼロってことでしょ?」
「何で分かるんだよ。運営の神の目ってやつか?」
「そんなの使わなくたって分かるよ。ここにその子がいないっていうことは、そういうことでしょ? それにさっきの依頼忘れたの? お助けカード10枚よ」
ミサキがもっともなことを言う。ショウにはあの女の子を探すことができなかった。
「ミサキさん、お助けカードって何ですか?」
ツバサがなぜだかお助けカードに興味津々のようだ。
「ショウ君が何でも言うことを聞いてくれるマジックアイテムよ。しかも、10回分!」
お助けカードがいつのまにか奴隷カード、いや奴隷を運転する免許証と化していた。
「えっ、私も欲しいです!」
ツバサまで欲しがる始末。
「それなら、これからも私に協力してくれるなら分けてあげるよ」
不思議とミサキがお助けカードを分けると言い始めた。ミサキの事だ。また悪いことを考えているに違いない。
「待て待て。協力はするが。言うことを聞くなんて言ってない」
ここでイエスと言えば、奴隷化は避けられない。ショウの反論が始まった。
「ショウ君? じゃあ、もう協力しないから」
「ショウ先輩? 私も協力しませんよ」
ミサキとツバサが不気味な笑みを浮かべた。あっさりとツバサが寝返った。
「分かった。分かったから……」
「素直でよろしい」
ミサキが満面の笑みを浮かべる。
「ショウ先輩? さっそくですが」
ツバサがモジモジと恥ずかしそうにしている。
「さっそくって何だよ?」
「何でも言うこと聞いてくれるんですよね?」
「ちょっと待て。お助けカードとやらは、まだ発行されてない」
「そうなんですか? 残念です」
ツバサが肩を落とし、ムスリとする。
「発行されたら、ツバサちゃんにも分けてあげるから」
ミサキの言葉にツバサが嬉しそうに返事をした。
「それで、オレの話はもういいだろ? ツバサは今日何があったんだ? それにその執事の格好。城に行ってたんだよな」
「はい。そうです」
次はツバサの番だと言わんばかりに、視線が集まる。