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179話 第三章 第二十九節 帰宅

 ショウとミサキが部屋へと戻る。明かりの付いたままの部屋に一人思わぬ存在がいた。それは、椅子に座りうたた寝をする。ツバサの存在。執事服のままのところをみると、疲れで着替えにまで気が回らなかったのだろう。


「ミサキ? ツバサは寝てるみたいだな」

「そうね」


 ミサキがあいづちを打つ。


「寝かしておいたほうが良さそうだな」

「起こしてあげようよ。ツバサちゃんは健気けなげにショウ君のことを待ってたんだと思うよ」

「そうなのか?」

「うんうん」


 返事をするミサキの広角が少し上がった。


「じゃあ、そうするか」


 ショウがツバサの元へと向かう。そして、ツバサの肩に手をやり揺すり起こす。


「おい、ツバサ。風邪引くぞ」

「ふぁー」


 目覚めたツバサが椅子に座ったまま延びをした。


「あれ、ショウ先輩、おはようございます」

「おう、おはよう」


 ショウがツバサの挨拶に返事をした時だった。ミサキが額に手を当て病人のようにショウに寄りかかった。とっさのことでショウが抱きかけてしまった。


「何だよ、ミサキ」

「何でミサキさんがいるんですか!」


 ツバサは目を見開き、眠気が一瞬で吹っ飛んだようだ。


「さっき、ショウ君に呼ばれてお酒飲んでたら、飲み過ぎちゃったみたい」


 ミサキが手にした酒など、レッドベアのトニック割りのみ。飲み過ぎるにはほど遠い量だ。


「ショウ先輩、これはどう言うことですか? ずっと待ってたのに……」


 ツバサの眼が据わっている。怒りと悲しみ、憎悪が混ざり合う不思議な目つきだ。


「何怒ってるんだよ。待っててもらっていたことは済まなかった」


 ショウが素直に謝罪をした。待たせて悪かったと。


「そのことじゃないです。何だってミサキさんと二人きりでお酒のみに行ってるんですか!」

「ミサキに相談したいことがあったんだよ」


 それは真実だ。明日、とらわれの身になる少女を助けたい一心での行動だった。


「ツバサちゃん、ホントはね。ショウ君なんて、相談って言って呼び出して私に精力剤飲ませるのよ。マカやアルギニン入りの精力剤。いやらしいと思わない?」

「おい、いやらしとか言うな」


 ショウだって男だ。エロいとかいやらしいとか言われたくない。そういう年頃だ。


「マカ……。アルギニン……。精力剤」


 ツバサが精力剤と言い終わるときには顔が真っ赤にで上がっていた。


「おい、ツバサ。顔が真っ赤だぞ。大丈夫か?」

「ショウ先輩がいけないんですよ。バカー」


 そんなショウとツバサのやり取りをミサキがお腹を抱え笑っている。酔っぱらっているふりなど、とうに忘れた様子だ。


「ツバサちゃん、冗談だからね」


 目尻に涙を浮かべながらミサキが言う。


「もう、ミサキさんの意地悪っ!」


 ミサキの意地悪など今に始まったことではない。いつものミサキだ。今日一日ミサキが不在で忘れていたに過ぎない。


「じゃあ、本題に入りましょう。丁度ツバサちゃんもいることだし。今日何が出来たのか、そして、明日何をやらなければならないのか」


 ミサキの真剣な眼差しに部屋の空気に緊張が走った。

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