175話 第三章 第二十五節 トウカのプライド
トウカとユウが合流した。もう帰宅の時間だ。すでに日が落ちる時間など等に過ぎている。二人が城をあとにする。門を出ると木にもたれ掛かるツバサの姿を発見した。
「わたくしたちを待ってたのですの?」
「一応。お礼もしないといけなかったし……」
ツバサが申し訳なさそうに言う。お礼とは城に入れなかった時のことだろう。
「あら、雨具の用意を忘れましたわ。今夜は雨でも降りそうですわ」
ユウが雨を確認するかのように両手を広げながら天を見上げ言う。満点の星空のこの日。雨など考えられない。
「もう、せっかくお礼でもと思ったの。もうっ!」
ツバサが不満げに頬を膨らました。
「では、戻りますわよ。明日が本番ですから」
「やっぱり明日、城が攻められるの?」
トウカが城攻めの心配をする。
「トウカさん。大丈夫ですよ。私が居ますし、ユウさんだっていますから」
トウカのレベルは34。レベル40が最高レベルのこの世界ではまずまずの強さだ。しかし、ツバサのレベル81。そしてユウのレベル96は反則レベルだ。
「まぁ、そうよね。ユウさんと一緒にいれば大丈夫よね」
トウカがユウの方を向き言う。
「トウカよ。明日もわたくしから離れなさい。そなたには憎まれ役は似合いませんから」
「憎まれ役?」
「えぇ、そうですわ。憎まれ役はわたくしだけで十分ですから」
ユウが遠い目をし夜空を見上げる。
「もう、ユウさんはまた何かたくらんでますね。私にも教えて下さい」
ツバサがユウの悪巧みに加わろうとする。ツバサだって仲間だ。
「雑魚には関係ない話ですわ」
ユウがあえて雑魚と言い、ツバサを突き放す。ユウなりの優しさなのだろう。
「もうっ! 雑魚って言わないで下さい」
ツバサがいつものように不満げに言う。それを見たユウからクスっと笑いが溢れた。
「ユウさんは置いて帰りましょ。ところでトウカさんはショウ先輩と仲直り出来たんですか?」
「そうだったわ。あいつとケンカ中だったわ。どうしよう。このまま戻ったらあたしが折れたみたいで悔しいわ。みんなここでログアウトしない?」
トウカがみんなでログアウトをしようと誘う。ログアウトは宿屋の部屋とミサキと約束がある。ここでは出来ない。
「わたくしは、ショウ様と明日の打ち合わせをしませんと」
「私も戻りますよ。トウカさんも早く、仲直りした方がいいですよ」
トウカが俯き小石を蹴った。
「でも、あいつが……」
「トウカさん、会いづらくなりますよ」
「……。やっぱり明日にするわ。ログアウトしたって言っておいて」
「トウカよ。ここでは不味いですわ。誰かに見られても行けませんし、まずは宿屋に」
「そうですよ。トウカさん。まず宿屋に行きましょう」
トウカが渋々《しぶしぶ》うなずき、三人は城を後にした。