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167話 第三章 第十七節 執事長の悩み

 ツバサがユウの言われるがままに城の内門で執事長を待つ。執事姿のままの為か、人々の視線を多く受ける。まるで学校の廊下に立たされる劣等生の様相だ。


「あっ、執事長!」


 ツバサが執事長の姿を発見した。早く城に入りたい気持ちがそうしたのか、まだ会ったことのない執事長に声を掛けてしまった。


「私が執事長だとよくわかったね」

「えっと、その……」


 ツバサは時間が戻る前に執事長に会ったことがある。知っていて当然だ。執事長にしてみれば初めて会うツバサに呼ばれたことを不思議に思たのだろう。


「執事長が迎えに来るって聞いていたので……。執事服を着た人を執事長と思ってしまいました……」


 ツバサが上手く誤魔化そうとする。未来から来たなど言えば信じてもらえないどころか、電波扱いされて城にすら入れなくなりそうだ。


「そうかい。君が新人の執事君だね。私が執事長です。どうぞ、よろしく」

「はい。ツバサです。お願いします」


 ツバサがちょこんと頭を下げる。執事衣装用に髪をアップにしているツバサはトレードマークのポニーテールをフワ付かせることはなかった。


「では、城でテーブルマナーの勉強をしましょう」

「えっと……」


 ツバサはテーブルマナーと聞き、顔色が曇る。あまり思い出したくない出来事のようだ。


「どうされました?」

「いえ、何でもないです。そうですよね。すぐに練習しないとお嬢様に呼ばれます(・・・・・・・・・)からね」


 ツバサはお嬢様の遊びについてすでに知っている。新人執事をおもちゃにする遊びのことだ。


ツバサ君(・・・・)。もしかして、ご存じで?」

「あっ、いえ……」


 ツバサが冷や汗を額に浮かべる。城に入ったことのないツバサが城の事情に精通しているのは不自然だ。


「お嬢様のお遊びのことです。知ってるのですか?」

「えっと、その……」


 ツバサの曖昧な答えに、執事長がため息を付きながら顔を手で押さえる。


「まさか、町にまでその話が漏れていたなど……」


 決して町に噂として漏れている訳ではない。しかし、ツバサとしてはその方がいいだろう。電波扱いされては困るからだ。


「いえ。前にここで執事をしてた人にアドバイスをもらっただけです。漏れてなんてないと思います」

「そうですか?」

「そうですよ。絶対っ!」


 ツバサが拳に力を入れ懸命に擁護する。もし、アドバイスしてくれた執事に付いて聞かれたらどうするつもりなのだろう。また嘘を連ねなければならなくなる。


「では、まずは城へ行きましょう」

「はい」


 執事長の後をツバサが追う。ツバサは何とか城への侵入を果たすこととなった。

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