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159話 第三章 第九節 イカサマ

「じゃあ、次は」


 ショウがフレンドリーコールの画面からトウカを選択した。


『何よ? あんた』


 トウカがフレンドリーコールに出た。ぶっきらぼうな物言い。未だに怒っているようだ。


「なぁ、お前の誕生日っていつだったか?」


 ショウは宝くじのことは言わずに、トウカに誕生日だけを聞いた。あまり良い聞き方だとは思えない。


『えっ、いきなりどうしたのよ?』


 トウカの声のトーンが1オクターブほど上昇した。


「お前の誕生日を知りたいじゃ、ダメか?」


 ショウの目的は宝くじの番号だ。ショウが誕生日の日付が知りたいと率直に述べた。


『えっ、でも、突然、どうしたのよ……。もう、すぐだけど……』


 トウカの声が急に小さくなる。なんとも聞き取りにくいとショウは思った。


「宝くじでだな、お前の誕生日がアタリっぽいんだ」

『何よ、それ。あんた、あたしにプレゼントでも用意してくれるんじゃないの?』

「そんなこと言ってないが」


 ショウの目的は宝くじを当選させることだ。プレゼントのことなど毛頭考えていなかった。


『何よ! あたしの誕生日は6月4日よ!』


 トウカがそれだけと言い放つと、フレンドリーコールが切断された。


「何で、お前は怒ってるんだ?」


 ショウは、トウカに質問するも、既にフレンドリーコールは切断済みだ。のれんに腕押し。手応えなど感じられるはずがない。

 ショウは、お目当てのトウカの誕生日の日付を入手した。この数字は間違いなく当たりだ。残るはショウが選んだうちの2つが正解だ。選んだ数字は34、81、96,99の4つのうちの2つだ。組み合わせは6通りだ。


「おやじ、宝くじのクジ券を6枚くれないか?」

「おっ、兄ちゃん。当てる気満々だね。もっと買ったほうが当たるんじゃないか?」


 確率的に言えばたくさん買えばそれだけ増える。しかし、確率上昇など微々たる物だ。店側からすればアタリをそう易々《やすやす》と取られては商売にならない。当たらないことを確信しているからこそ店主は勧めてくるのだろう。


「いや、6枚でいい」


 ショウは冷静に答える。この6通りの組み合わせさえ購入すれば、大当たり確実だ。それ以上買う必要が無い。


「そうかい、じゃあ、クジ券6枚だな」


 そう店主が言うとクジ券を取り出し指をペロリと舐め、ペラペラ枚数を数えていく。


「はいよ、6枚だ」


 店主がショウにクジ券を手渡した。券を受け取ったショウは当選番号であろう6月4日の6と4。そして、34,81,96,99の組み合わせを作っていく。


「おやじ、頼むわー」


 ショウが書き終えたクジ券を店主に渡した。


「なんだか、同じような番号ばかりだけど良いのか?」


 店主が心配するのも無理もない。全てのクジ券に6と4の数字が入り、その他の番号は34か81か96、もしくは99だからだ。


「あぁ、構わない」

「そうかい、じゃあ、魔法を掛けるからな。後から変えたいと言われても無理だからな」


 店主が机にクジ券を並べた。手元を光らせ不正防止の魔法を掛けた。


「はいよ。これで完成だ。発表は7時からだから」

「わかった。あと服をくれ」

「悪い、悪い。服だったな」


 店主は頭を掻きながら言う。クジ券を売るあまり服のことを忘れていたようだ。

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