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158話 第三章 第八節 宝くじ再び

 ショウは街に繰り出した。ショウは未来を変えようと動き出す。ロールバック前の世界では、城が攻められ多くのNPCに被害が出た。ショウはその中でも特に牢屋の中で出会った女の子、アイラの存在が気がかりだった。正直な話、城が攻められようが返り討ちにすればいい。単純なことだ。レベル99のショウが本気を出せば一人で城を守ることも、落とすこともできるだろう。それほどの戦力を秘めている。しかし、そんなショウですら女の子一人救えなかった。そのことを思うとショウは奥歯を噛みしめる思いだった。

 ショウが宿屋の近くの道具屋の前を通過する。そんな時、ショウがピタリと足を止めた。


「おやじ、魔道服を1つ頼む」


 ショウは、いつまでもユウにバスローブを着せておく訳にもいかない。あれでは外出もままならない。そう思いショウは魔道服を一着頼むことにした。


「どれにするんだ?」


 ショウは、既にどの魔道服にしようか決まっていた。この間と同じ物を選べばいい。そうすれば前回同様ユウが喜んでくれるに違いないと思ったからだ。


「女物で、白の、レベル30のを頼む」


「レベル30って言ったらなかなかのレベルだけど、着られるのかい?」


 店の主人が驚きの声を上げた。それもショウにしてみればいつもと同じ反応だ。特に驚くこともなかった。


「構わないから、一着頼む」

「プレゼントかい? ラッピングくらいおまけするが」


 店の主人が気前よくサービスしくれると言う。


「どうせなら、頼む」


 ショウがラッピングを頼んだ。前回はツバサの猛反発に合いラッピングは叶わなかった。しかし、今はツバサの存在がない。どうせだったらとラッピングを頼むショウがいた。


「わかったよ。ちょっと、時間がかかるから、その間にこんなのどうだ?」


 店の主人が提案したのは宝くじだ。ラッピングの時間に宝くじを買わせようなど、なかなかの商売人のようだ。


「宝くじか……」


 前回はトウカに宝くじを勧められショウは三等を当てていた。しかし、それでも運がいいほうだ。ツバサなど、かすりもしなかったからだ。


「なぁ、おやじ? この宝くじって、すでに当選番号が決まってるんだったな?

「あぁ、そうだが。イカサマが無いように、一週間前にすでに決まっているからな」


 店の店主がラッピングする手を止め説明をした。


「そうだったな」


 ショウが前に聞いたことを思い出すかのように答えた。


「この宝くじって、何枚でも買えるのか?」

「あぁ、買えるとも。何なら、全通り買ってくれてもいいぞ。それなら必ず一等が当たるからな」


 店主が一等のティアラを指差しながら告げた。宝くじ一枚がおよそ回復ポーション五本と同等の値段だ。決して高い金額ではない。しかし、全通り買おうとすれば約376万分の1の確率だ。ポーションおよそ2000万個分の値段だ。買えるわけがない。


「ちょっと待ってくれ」


 ショウが店に背を向けフレンドリーコールを始めた。


「おい、ユウか? ちょっといいか?」

『ショウ様、どうされました?』


 ショウがフレンドリーコールをした相手はユウだった。


「今、道具屋で宝くじを買おうと思ってるんだけどな」

『宝くじですの? タイムスリップ物の物語でよくあるシチュエーションですわね』

「まぁ、そうなんだが」

『宝くじは運でしかありませんわよ。一等のクジ券がどこで手に入るか分かりませんわ』

「いや、数字選択式の宝くじなんだ」

『そうですの? それで、選択番号はお分かりですの?』

「それなんだが、この宝くじ三日前、いや、過去に戻る前って言ったほうがいいか? その時に買って三等を当ててるんだ」

『三等と言われましても、三等がどのような物か分かりませんわ』

「あぁ、そうだな。選択式の宝くじで、1から99までの数字を4つの数字を選ぶクジのことなんだ。4つ当たれば一等、3つで二等、2つで三等、1つで四等、ってな、形だ」

『それの三等を当てられたということですわね。4つのうち2つは当たっている。そうしますと……、4C2×95C2。26790通り。99C4の

99×98×97×96÷1×2×3×4の376万通りよりマシではありますが、諦めたほうがいいと思いますわ』

「そのコンビネーションとやらは分からないが、実はな、トウカも三等を当ててるんだ」

『そう言われましても、ショウ様と別の数字を選んだのですか?』

「あぁ、そうだ」

『でしたら、8つの数字の中の4つがあたりということですわね。8C4。8×7×6×5を1×2×3×4で割って70通り。全通り購入できなくもない数字ですわ』

「やっぱり、そう思うか?」

『えぇ、まぁ。それで数字の方は覚えてますの?』

「確かな、誕生日を選んでたんだ」

「ショウ様のですか?」

「オレのも確かに選んであったが、トウカのだ」

「覚えてますの?」

「いや、忘れた」

『そうですの?』

「トウカに聞いた方がいいよな?」

『わたくしの誕生日だけで十分ですわ』


 ユウは質問と違う内容を答えてきた。


「おまえの誕生日はハズレだ」

『意地悪な宝くじですこと』


 ユウは当選番号に不服のようだ。


『でも、ショウ様の誕生日の可能性も有りえますわ』

「そいつは、なさそうだ。ツバサもトウカと同じでオレの誕生日の数字で買ってた。4等すらもらえてなかったからな」

『あら、あの子も案外役にたちますわね。でしたら、尚の事当選確率が上がりますわ』

「やっぱりそうか?」

「ところで、ショウ様は何をお選びに?」

「あぁ、突然数字を選べと言われたからな、適当にみんなのレベルを当てがった」

「そこにはわたくしも居ますの?」

「そうだな、お前のレベルも選んだぞ」

「あら、嬉しいお言葉」

「だから、選んだ数字は下からトウカのレベル34、ツバサの81、お前の96、オレの99って感じだ」

「二人ほど余分が居ますわね」

「なんだそれ? とりあえずこの数字の中に2つ正解があるようだ」

「そうですわね。残るは」

「トウカの誕生日で間違いないな」

『そうなりますわね。ただ、当選番号が変わる可能性もありますわ。バタフライ効果と言うものですわ』

「バタフライ効果?」

『えぇ、ちょうが羽ばたくわずかな力で多くの物が変化する喩えですわ。ショウ様が別の番号を選択する僅かな変化が、当選番号を変えてしまう可能性です』

「当選番号は1週間前にすでに決まってるんだ」

『それでしたら大丈夫そうですわ。バタフライ効果が起こる以前での話ですのね』

「そういうことだ。ちょっと、トウカに聞いてみるわー」

『お切りになるのですか?』


 ユウの悲しげな声が聞こえた。


「あぁ、また連絡する」


 そう言うと、ユウの返事を待たずにショウはフレンドリーコールを切断した。


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