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154話 第三章 第四節 有罪判決

「お、おう。ツバサか。おはよう」

「おはよう、じゃ、ありません。何してるんですか!」


 ツバサのタイミングの悪さは筋金入りだ。正に今ショウがトウカを押し倒した瞬間だった。タイミングの悪さにも程がある。ツバサの視線を感じたトウカが覆いかぶさるショウを払い除けた。


「プロレスをだな」

「嘘です。ホントのことを言ってください」


 ツバサの目が細くなった。明らかに疑われている。


「トウカさんも、何してたんですか?」

「プロレス?」


 トウカもとぼける始末だ。ツバサが呆れ顔になる。


「トウカさんも、そんなこと言ってないで、ホントのことを言ってください! もうー」

「ツバサさん、こいつが行けないのよ。昨晩ユウさんが来てたのに白状しないから。それで揉めてたらこう

なっちゃったのよ」


 トウカの話は半分が本当だ。ユウが来ていた事実はない。しかし、トウカがユウが昨晩来たと信じているのがたちが悪い。


「ショウ先輩、ホント何ですか! ユウさん来てたんですか?」

「来てない。トウカの勘違いだ」


 ショウは本当のことを伝えた。しかし、二人は納得していないようだ。


「嘘です。来てないことを証明してください」

「証明って言われてもな。来てない証拠も無ければ、来た証拠も無いぞ」


 ショウが誇らしげに伝えた。来てない証明が出来ない以上、来た証明も出来ないことを伝えたのだ。


「ツバサさん、布団からユウさんの香水の香りがするのよ!」

「げっ!」


 ショウの思惑は外れた。ユウの香りが残っていることは間接的にではあるがユウの存在を物語っていた。


「ショウ先輩? 調査します。どちらのベッドを使ってたんですか?」


 ショウは冷や汗がダラダラ滴る。香りと言う、これほどまでの証拠抑えられることを恐怖する。


「ツバサさん、あっちのベッドよ」


 トウカが入り口側のベッドを指差した。


「では、調査します」


 ツバサがベッドへ移動しようとする。それを抑えようとショウが立ちはだかった。


「ショウ先輩、どいてください」

「ツバサ、ちょっと待て、調査されると誤解を招く」

「誤解を解くため調査するんです、止めないでください」

「それは困る」


 このままではショウの冤罪えんざいは確実だ。ユウの香りがする事実は存在する。香りがあるイコール、ユウの存在ではないのだ。


「どいてください」


 ツバサが、ショウの体を押す。それに対してショウが耐えようとする。ここではステータスが物を言う。ショウのレベルは99だ。そう簡単に引かないだろう。


「ショウ先輩はSTR低いので諦めてください」


 ツバサがステータスの一つSTRを指摘した。力のステータスのことだ。レベルではショウが圧倒しているが、STRの数値自体は騎士のツバサには遠く及ばない。


「おい、ちょっと待て」

「待てません」


 ツバサがショウを力ずくで押す。ショウは耐えることが出来ない。


「ツバサさん、こっちのベッドからもユウさんの香りがするのよ」


 トウカが窓側のベッドを指差した。


「こっちもですか? でも、ショウ先輩の使ったほうを調査したいので……」

「ツバサさん、そっちはあたしが調査したから、大丈夫です」

「で、でも。ショウ先輩の使った方を……」


 ツバサはただの変態と化しているようだ。調査という口述こうじゅつたくみに使う。職権乱用しょっけんらんようとはこのことを言うのだろう。


「まずは、こっちを調査して」


 トウカが言うと、ツバサの腕を引く。


「わかりました。こっちから」


 ツバサは窓側のベッドへ行くと、布団をめくりクンクン匂いを嗅いだ。


「ショウ先輩、有罪です!」


 ツバサがユウの香水の匂いを嗅ぎ分けたのだろう。くしてショウの有罪。いや、冤罪が確定するのだった。

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