146話 第二章 第十五節 トウカの召喚
「メッセージよ!」
ミサキが自信満々に告げる。メッセージとはリアルの世界のメールのような物のこと。
「は? 今度はメッセージなのか?」
「そうそう。トウカちゃんはお城よね? フレンドリーコールは届かないはずだから」
城はセキュリティの関係でフレンドリーコールが圏外になっている。城の中にいるであろうトウカとはフレンドリーコールでの連絡は出来ない。
「そうだろうな? メッセージを送っておけば、城を出たときに見れるってことだろ?」
「そういうこと。じゃあ、ショウ君? 早く、送る準備をして」
ミサキがショウにメッセージの催促をした。あくまでショウにやらせようとする。ミサキは面倒なことを兎に角嫌うのだ。
「何だって、オレが送らなければいけないんだ? ミサキ、お前が送れよ」
「そんなこと言っていいのかな? ショウ君の刑期が延びることになるよ」
ミサキがショウのことを罪人のように扱い始めた。ミサキの刑事ごっこは続いているようだ。
「しょうがないな。てか、何て送ればいいんだ?」
急にメッセージを送るよう求められても、送る内容などすぐには思い付かない。ショウが腕組をして考えていると。
「”どうしても会いたい”それだけで十分だよ」
「そんなので、トウカが戻ってくるか?」
ショウが疑問に思い腕を組んだ状態で天井を見上げた。
「ショウ様、そんなこと書かないでほしいですわ。勘違いしますから」
「ん? 勘違いも何も、なんだ? 会う必要があるから”会いたい”って送るんだろ?」
ショウは不思議そうに唸りながら答えた。
「ユウちゃんは、静かに。面会禁止にしちゃうよ」
「ミサキよ、心外ですわ」
面会を人質に取られているユウはすごく弱い。ユウのこんな姿も悪くないとショウが思う。
「で、本当に”どうしても会いたい”でいいのか? こんなのでトウカがすぐ来るのか?」
「女心が分かってないようね」
「分かりたいとも思わんが」
「じゃあ、早くメッセージを送りなさい」
「わかった、わかった」
ショウは目の前に画面を呼び出した。いつものメニュー画面だ。その中にはステータスの表示画面やフレンドリーリストの表示、メッセージ等、多くの機能が備わっている。その中のメッセージ欄を開いた。
「で、“どうしても会いたい” でいいんだよな?」
「ショウ君って、鈍感にも程があるわね」
「何が言いたいんだ? マントを回収するのに会う必要がある。それだけだろ?」
ミサキはため息を漏らした。
「何だよ」
「ショウ君はホントにどうしようもないね。まぁ、送ってちょうだい」
「あぁ、送るぞ」
ショウは、メッセージの送信のボタンを押した。無事に”どうしても会いたい”の文字がトウカに届くことを願う。
「ショウ様? 送られたのですか?」
ユウが哀愁に満ちた目でショウを見る。
「あぁ、送ったが。どうした?」
「あの……」
ユウが恥ずかしそうに、モジモジする。
「何だ?」
「あの……。わたくしにも”どうしても会いたい”って送ってくださいませんか?」
「いや、もう会ってるだろ?」
ショウが真面目に受け答える。すでに同じ空間にいる。そんな相手に会いたいなどメッセージで送らない。
「ユウちゃん、残念だったわね」
しょんぼりするユウにミサキが声を掛けた。