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144話 第二章 第十三節 独房入り

「ショウ君、どういうことなのか説明してくれるかしら?」


 ミサキが机をバンっと叩く。かなりご立腹のようだ。人前で怒るのはあまりよろしくない。今、部屋にいるのは帰宅したショウ、ユウ。そして部屋に居たミサキの三人だ。普通であればユウに席を外させるのが一般的だが、それすらしない。


「ん? 何のことだ?」


 ショウがしらばっくれた。ミサキが言うのは森を喪失させたことで間違いない。だが、確認するまでは分からない。ショウはわずかな可能性に賭けた。余計よけいなことを自分からしゃべるほど野暮やぼではない。

 するとミサキが何部もの新聞を机に広げた。例のゴシップ新聞はないところを見ると言論弾圧に成功したのだろう。しかし、問題は他社だ。他社の新聞記事の見出しに”森が消失した”とデカデカと書かれていた。挙句あげく魔神まじんが現れたと憶測する記事すらある。


「この記事が見えないの?」

「あぁ、魔神が出たのか? 怖えーな」


 ショウはあくまでシラを切ろうとする。


「怖えー、じゃないでしょ! これショウ君がやったんでしょ?」


 ミサキが鬼の形相で言う。よほど不味まずいことのようだ。


「ミサキよ、それはわたくしが――」


 ユウが言い終えようとした瞬間だった。ショウがユウとミサキの間に身体を入れた。


「わりー、やりすぎたわ」


 ショウは右手で頭をきながら自白した。


「あら、素直ね。初めからそう言えばいいのに。でもしばらくは反省してもらわないと。罰として、ショウ君はしばらく独房入りよ」

「なんだよ、独房って? 城の牢屋にでも入れられるのか?」


 ショウは城の牢屋と言うと、腕に熱傷の痕のある少女を思い浮かべた。


「この部屋のことよ。ここから出るの禁止だから」


 ショウの予想とは違った。独房とは宿屋のこの部屋のことを指すようだ。しかし、どうやってショウを閉じ込めるのか。


「鍵でもするっていうのか?」


 ショウが安直あんちょくな質問をした。鍵くらいじ開ければどうと言うことはない。


「いいえ、マントを没収するの。そうすれば出られないでしょ?」


 ミサキは鍵よりも高度な監禁方法を提案した。今のゲームの仕様ではレベル40を越えると石化してしまう。ショウはこの仕様に該当するレベル99だ。それを免れるには偽装マント(・・・・・)でレベルを40に誤魔化す、もしくは、偽装マントと同様の効果がある、この部屋にいる他ない。マントを奪われては外出が不可能になることを意味する。


「ミサキよ、ショウ様が可愛そうですわ」

「ユウ、いいんだ」


 ショウがユウに言葉を発すると、ミサキに向き直し言った。


「しばらくおとなしくしてればいいんだろ?」

「そういうことね」


 ミサキはそう言うとクローゼットへ向かった。中からマントを取り出し始める。


「ショウ君、早くマント出して」


 ミサキが手を出した。ショウからマントを貰おうとしている手だ。


「さあ、早く」


 ミサキの催促にショウは負けた。渋々ではあるが肩にかかったマントをミサキに手渡した。


「ユウちゃんの、マント出して」

「わたくしも、渡さなければなりませんの?」

「ええ、そうよ。どうせユウちゃんのことだもの、ショウ君に渡すに決まってるから」

「それでは、私はここを守れなくてよ」


 ユウは食い下がらない。昨日の城の件を言っているのだろう。守るには城まで行かなければならない。しかし、偽装マント無しでは、外にすら出られない。


「それでも、です。森の件どうやって上に報告するか頭が痛いのよ。この悩みが解決するまでマントは無し」

「分かりましたわ。では、ここに来ること自体は認められるという解釈かいしゃくをさせてもらいますわ」

「まぁ、面会って形ね」


 本当にこの部屋は独房化したようだ。犯罪者の面会って訳だ。


「なぁ、ミサキ? 腹が減ったらどうするんだ?」

「カツ丼でも注文しなさい。出前が来るから」


 どこまでも、犯罪者扱いのようだ。独房、面会、カツ丼。刑事ドラマの見過ぎにも程がある。


「ちなみにそのカツ丼はツケでいいのか?」

「自腹に決まってるでしょっ!」


 ますます、ミサキを怒らせてしまう。


「じゃあ、ユウちゃん、早くマントを出してくれるかしら?」

「仕方がありませんわ」


 ユウは聞き分けが良かった。ここで拒否したところで神の裁きに合うのが目に見えている。最悪、マントの消去すら考えるかもしれない。それだったら渡したほうが賢明けんめいだ。それくらいのことはユウは考えているのだろう。


「預けるだけですから」


 ユウも肩に描けるマントをスルリと下ろした。赤色のマントがミサキに渡る。


「ところで、トウカちゃんとツバサちゃんは?」

「あいつらか? トウカは、城へ。ツバサはダンジョンにこもった」

「あの子たちからも、マントを回収しないとね。あの二人も簡単にショウ君にマント貸そうとするから」

「そんなもんか?」

「特にトウカちゃんなんて、マント無しで外出できるんだから貸しても困らないからね」

「確かにそうだな」

「まずは、これ以上事態を悪化されても困るから、おとなしくしているのよ」


 ミサキが席を立ち赤いマントを羽織、部屋の扉へと向かう。


「ミサキ? どこに行くんだ?」


 ショウがミサキに質問する。


「トウカちゃんとツバサちゃんのマントを回収しにね」

「トウカはともかく、そんなことしたらツバサが石になるぞ」

「そうね、じゃあ、ツバサちゃんは呼び出しましょう」

「あいつ、今、狩りの真っ最中だぞ。あいつの性格からしてフレンドリーコールで呼んだところで帰って来ないと思うが。だよな、ユウ?」


 ショウはユウに意見を求めた。


「そうですわね。あの子(・・・)、夢中になると何も見えなくなりますから」


 ユウがツバサの性格を指摘した。ツバサと一緒にいる時は雑魚、雑魚、呼んでいるのが不思議なほどだ。


「ツバサちゃんならすぐに呼び出せるよ」


 ミサキが腰に手を当て自信有りげに言う。


「どうするんだよ?」

「その前に、ユウちゃんには耳栓でもしていてもらいたいけど」

「なぜ、わたくしを仲間外れにするんのですの?」


 ユウは微オコだ。口調が物語っている。


「じゃあ、邪魔しない約束で聞いててもいいよ。邪魔したら、面会も無しにしちゃうから」


 面会とは独房に閉じ込められるショウとのことだ。ショウとの面会を人質に取られた。


「仕方ありません。多少のことでしたら、我慢しますわ」


 面会を人質に取られたユウは渋々であるが了承する。


「で、ミサキ? 何て言って呼び出すんだ?」

「それはね……」


 ミサキがフレンドリーコールのボタンを選択した。繋ぐ相手はツバサだろう。 

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