141話 第二章 第十節 ダブルファイアースラッシュ
「剣技! ファイアースラッシュ!」
トウカがショウを押し退け素早く刀を振るった。太刀名行安からは火が吹き出し、猪モンスターを捉えた。モンスターはトウカの剣技を受けると消滅した。
「昨日のお話も、本当のようですね」
メイド長が口にした。メイド長が言ったのは昨日の守城戦のことだろう。トウカの活躍など半信半疑に思っていたのかもしれない。
「あたしも協力するわ」
「あら? 元団長である、わたくしに付いてこれますか?」
「もちろんだわ」
二人のレベルの差は6レベル。案外いいコンビかもしれない。だが、伸び率から言えばトウカの方が上だ。あっと言う間にレベル40など越えてしまうだろう。
「頼もしいことで。では、協力してもらいましょう」
メイド長の言葉にトウカがうなずく。そして、またしても茂みがザワつき始めた。モンスターが現れる前兆だ。
「次が来ますよ」
メイド長が口にした時だった。猪モンスターが飛び出した。
「「剣技! ファイアースラッシュ!」」
トウカとメイド長の声がオーバーラップする。Wファイヤースラッシュの完成だ。上級剣技フレイムスラッシュに劣らないほどの火炎が上がる。火炎はモンスターを焼き付くすだけでは飽き足らず森の茂みを焦がすほどの威力を見せた。
「いつまで耐えれるかな」
編集長の声がする。トウカとメイド長が崩れるのを今か今かと待ちわびているようだ。その声を聞いた途端、メイド長が声のする方へと駆け出した。編集長を仕留めようと言わんばかりだ。
「おっと危ない」
メイド長の剣が空を切る。またしても狙いを外したようだ。
「君たちの相手はモンスターだ。よそ見をしてると、後ろの子達にモンスターが群がるぞ」
編集長が楽しそうな口調で告げた。後ろの子とは、ショウ、ツバサ、ユウで間違いないだろう。この
三人は守る必要などない。その事を編集長は知らないようだ。
「あの子達は関係ないでしょう。逃がしてあげなさい」
「メイド長の心がけ次第だがな」
「どうしろと?」
「おっと、モンスターが出てきたぞ。行かなくていいのか? クククッ」
メイド長が後ろを振り返る。すでに茂みからモンスターが現れていた。メイド長がモンスターに睨みを聞かせるとモンスターに駆け出す。走りながら剣を振るい、モンスターを蹴散らした。
「トウカさん、大丈夫ですか?」
「あたし、これぐらいなら大丈夫だわ。まだ本気じゃないし」
メイド長はトウカの言葉に驚きの表情を浮かべた。生死の掛かった戦いの中、本気じゃないと言った事に驚いたのだろう。
「まぁ、見てなさい。あたしの本気よ」
トウカが自信満々に言う。
第四クラス剣技――雷切り――
トウカの刀が電撃を帯び、モンスターを両断した。その様子を見たメイド長が広角を上げた。
「その技、レベル4の剣技ですね。もしかして、守る必要がないのかしら?」
メイド長はトウカの太刀を見て安心したのだろう。自分と同等の者がいるなら心強いと。
「まぁ、あたしのレベルは34だけどね」
トウカがそういうと、メイド長の横に並ぶ。
「まさか背中を預けられる子がメイドをしてるなんて思いませんでした」
「あたしも、メイド長がここまで強いなんて知らなかったわ!」
トウカとメイド長がニヤリと笑った。