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140話 第二章 第九節 北の一本松

 エリア、北の一本松。一本の松を中心に、背が低く青々とした草が広がる大地。初心者エリアの中ではモンスターが湧くことで有名な所になる。無制限にき出るモンスター。そして、モンスター自身もやや強いため、初心者のレベル上げに使われる有名なハンティングポイントとなっていた。

 そんな一本松までショウ達一行がたどり着く。不気味と敵がいない。不思議な光景(・・・・・・)だ。


「おい、ここで取材をしてるのは知っている。顔を出したらどうだ?」


 ショウが編集長の炙り出しに声を張った。


「さっきの青年か? あのババアは来てないのか?」


 編集長が松の裏から姿をあらわした。手にはふたの空いた壺。壺の口からは黄色の煙がゆらゆら(・・・・)と立ち上る。


「ババアって誰のことだ?」


 ショウが問いた。メイド長のことで間違いないだろう。


「あの、炎の剣を振り回してたやつだ。メイド長とでも言えば分かるか?」


 編集長が口角を上げ言う。どうやら編集長の狙いはメイド長のようだ。


「残念だが、メイド長は不在だ。だからなんだって言うんだ?」

「スクープを書こうと思ってたんだがな、”元王国団長、森でちる”って、な」

「スクープにはならないみたいで残念だったな」

「せっかくメイド長の経歴まで調べたんだがな。無駄手間になることが残念だ。昔、騎士団長までやった身だ。最後にスクープにしてやろうと思ったんだがな。記者として最後の手向たむけだ。それがこんな小物(・・・・・)でがっかりだ」

「代わりにオレ達をやろうって言うのか?」


 ショウが目付きを変える。その時だ。ショウの遠く後ろから、女性の声が聞こえた。


「ご期待に添えそうでなによりです」


 ショウが後を向くと、遥か後方にトウカとメイド長の姿が写る。この二人もどうやら罠にかかったようだ。


「おう、おう。メイド長。先程は世話になったな」


 編集長がニタニタ笑いながら言う。よほどおかしいことがあるようだ。


「世話をした覚えはありませんが」

「まぁ、いい。スクープ書くからさっさと死んでくれ(・・・・・)


 編集長が、腕に抱える壺の蓋を閉じ煙を遮断した。すると途端に茂みがガヤ付き始める。


「これはな、モンスター避けのアイテムだ。今にモンスターで溢れ変える」


 敵を寄せ付けないようにする壺。危険なエリアを取材する記者にとってはいつも使っているものなのだろう。蚊取り線香みたいなものだ。


「トウカさん、先程の剣を貸してもらえますか」


 トウカがうなずくと、アイテムボックスから炎の剣を取り出した。そして、メイド長の手に渡った。

 メイド長が剣を手にすると駆け出した。目標は編集長だろう。メイド長の目は野生の虎のようにするどい。一撃で編集長を捉えんと言わんばかりだ。


「おっと、相手は俺じゃないぞ」


 記者がそういうと一枚の布を羽織った。布を被った編集長は森と同化。透明となったのだ。


「卑怯ですね。透明化など」

「あまりしゃべると場所が特定されるからな、しばらく見物させてもらうことにする。せいぜい頑張るんだな。若者を守って戦えるか? 守って死んでもスクープだ。若者を見捨ててもスクープだ。俺としてはどっちでもいんだが」


 記者も笑い声が響く。よほど面白いことなのだろう。


「あなた方、後ろへ」


 メイド長がショウ、トウカ、ツバサ、ユウを守るがために、前へと出る。茂みはガサガサと不気味に音を立てる。

 すると、茂みから獰猛どうもうな牙を有するいのししが飛び出してきた。


「剣技、ファイアースラッシュ!」


 メイド長の手にする剣が火を帯び猪を捉えた。すると猪が光と共に消滅した。


 しかし、またしても別の猪がメイド長を襲う。そして、またしても……。今のところはメイド長優勢で事が運んでいる。しかし、どこまで技を打ち続けられるのか。この世界最強レベルと言えども所詮はレベル40だ。


 メイド長が一生懸命頑張る後ろでショウがユウに話しかける。


「これって、結構まずいよな」

「わたくし達も、加勢するべきですわね」


 ユウがそう言うと、メイド姿のトウカ頷く。そして、アイテムボックスから太刀銘行安を取り出した。ツバサも同様にアイテムボックスから武器を出す。


 メイド長の額には汗が浮かぶ。その時だ、モンスターがメイド長の後ろへと抜けた。メイド長が、しまった(・・・・)と言わんばかりに後ろを振り返った。

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