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137話 第二章 第六節 メイド長のレベル

「少々やり過ぎのようですね」


 メイド長はおくすることなく編集長をにらむ。きもすわっているようだ。


「その目は何だい? そんなに後ろの少年があてになるのか? たかが少年一人にどこまでできるのやら。メイド長に連れ回されて可愛そうなことに」


 編集長が哀れな目をショウに向けた。本当に哀れなのはインチキ編集長だ。ショウの強さはメーター振りきりの測定不能レベルだ。


「いいえ、わたくしとメイドだけで十分ですわ」


 メイド長の発言は、トウカの昨日の働きからきたのであろう。しかし、トウカのレベルは34。確かに強いと呼ばれるレベルではあるが、男3人相手では部が悪い。


「へっ、メイド2人に何が出来るんだって?」


 用心棒が鼻で笑う。無理もない。格好からは全く強さを感じられない。ただのメイドだ。


「おい、編集長。報酬追加でいいか。やる気が出ん」

「追加報酬だと? おまえらにはすでに高い金払ってるんだが」


 編集長が面倒臭そうに言う。


「編集長、簡単なことだ。金じゃねー。あのメイドをもらうとする」

「あぁ、そんなことか。メイドの2人くらい、くれてやる」

「あっちのババァはいらねー。1人だけで十分だ。おい、野郎共、編集長の許可が出たぞ。メイドが欲しけりゃ、さらってこい」


 ババァとはメイド長で間違いないだろう。用心棒の狙いはトウカ1人のようだ。


「トウカさん、わたくしに剣を貸して貰えますか?」


 メイド長が剣を貸せと言う。しかし、トウカの持つ剣は、レベル30からの刀とレベル40からの炎の剣のみだ。トウカが刀を持つとすれば、メイド長に渡せるのはレベル40の剣。現段階での最強クラスでしか持てない剣になる。トウカですら持てない剣をメイド長が扱えるというのか。


「でも、貸せる剣は『炎の剣』しかないわ。レベル40からの剣よ」


 トウカも同じことを心配しているようだ。しかし、メイド長の口から出た言葉は。


「構いません」


 トウカはうなずくと、アイテムボックスの中から炎の剣を取り出た。それをメイド長へと手渡した。

 メイド長は炎の剣を受け取ると、片手で剣を振るった。剣の火炎が空中を舞う。


「なかなか手入れが行き届いてますね。トウカさんのレベルでは装備できないはずですが、形見か何かですか? 想い人からの贈り物ですか?」

「そ、そんなんじゃないわ。それにしてもメイド長はレベル40なの?」

「えぇ、これでも若いときは団長を務めておりまして、炎の剣を使っていたんですよ。最近ではもっぱら包丁ですが」


 メイド長は遠くを見据え、若いときの記憶を懐かしんでいるようだ。


「メイド長を守らなくてもいいなら、楽勝ね」


 トウカがメイド長に言う。そして、トウカは自分用の刀をアイテムボックスから取り出すと、敵に向かい構えた。


「えぇ、トウカさんを守るくらいの力はありますよ。そちらのトウカさんの彼氏さんは大丈夫ですの?」

「彼氏なんかじゃないわっ! もう」


 トウカは全力で否定した。


「オレは、誰にも負ける気はしないけどな」


 久しぶりに話題を振られたショウが口を開く。ショウは間違いなく、この世界で最強だ。今は剣士であるがためにレベル60ほどの力しかないようだが、それでも誰にでも負けないほどのレベルだ。


「そうですの? 用心棒3人位でしたら、メイド長の私で十分ですから」


 メイド長の持つ炎の剣を見つめる用心棒は額に脂汗を浮かべている。炎の剣を持つものがどれだけの力を持っているかなど一目瞭然だ。


「おい、編集長。こんな割りに会わない仕事やってられるかっ!」


 用心棒の1人が言葉を発した。


「こっちは、金を出してお前らを雇ってるんだ。何とかするんだ」


 編集長が用心棒に仕事をするよう、発破をかける。


「ケガをする前に、お引取り願えませんか」


 メイド長は柔らかな言葉と裏腹に、剣を一振りする。燃え盛る炎の剣からは火炎がこぼれる。


「そ、そうだな。城に目を付けられたんだ。どうせこの新聞社もつぶれる。命を懸けることなんてないな」


 用心棒はそう告げると、後ろを振り返り部屋を後にした。残されたのは新聞社の面々のみだ。


「用心棒は帰られましたが、いかがいたします?」


 メイド長に睨まれた編集長は、身動き一つ取れない。まるで蛇に睨まれた蛙だ。


「わ、分かった。訂正記事を書こう」

「始めから、そういって頂ければよかったのに……。早く、始めなさいっ!」


 メイド長が編集長を叱咤しったした。メイド長のあまりの剣幕けんまくに編集長は驚き、脱兎だっとごとく机に向かった。


「トウカさん、一件落着ですね。訂正記事に不服ふふくなら、またここに着ましょう。わざと小さく記事を書いたりなんて、なさらないと思いますが」


 メイド長は最後の言葉を編集長に投げ掛けた。それを聞くや、編集長がピクリとする。


「じゃあ、訂正記事がまともか新聞で確認しなきゃね」

「ええ、また何かあったら相談してください。あと、久しぶりに血が煮えたぎりました。大変手入れが行き届いてる剣ですね」


 そういうと、炎の剣がトウカの手元に戻ってきたのだ。


「で、トウカ? この後はどうするんだ?」

「うーん。メイド長にもお礼をしたいからお城に行くわ」

「そうか、じゃあ、オレは宿屋に戻るから、何かあったら連絡してくれ」

「分かったわ」

「では、トウカさん。お城に戻りましょう」


 メイド長の掛け声で皆、新聞社を後にした。


「ところでオレって、必要だったのか?」


 一人残されたショウは小声で呟いた。今回に関してはまったく役に立っていないといっても過言ではないのだ。そんなことを呟いていてもしょうがない。ショウも新聞社を後にするのであった。

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