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131話 第一章 第十節 バリケード 

 ショウとトウカが階段を降り一階のロビーへとやってきた。そこで二人が目にしたのは、ことが大きくなった惨状だ。コンシェルジュの男性が入り口の戸を力を入れ支えていた。扉の窓からは多くの顔がのぞく。宿屋が、まるでバーゲンセール会場の入り口のようになっていたのだ。人、人、人。とにかく人が群がっている。しかし、大半が客ではない。多くが新聞社の人間だ。古代服に首からカメラを下げているのは何ともミスマッチではあるが、このゲームの中ではあり得る格好かっこうだ。


「押さないでください」


 コンシェルジュの男性がえる。ここで力をゆるめるようなら決壊けっかいしてしまうであろう。濁流だくりゅうごとく押し寄せる人に宿屋が壊されかねない。


「ちょ、ちょっと、あんた。バリケードになる物ないの?」


 トウカが慌てて口を開いた。この騒ぎの渦の中心はトウカだ。ここで扉が壊されようものなら、トウカが人と言う濁流だくりゅうに押しつぶされてしまうであろう。


「あれなんて、どうだ?」


 ショウが木製の本棚ほんだなを指差した。ショウの背丈せたけゆうに超える本棚だ。しかも、棚の中には本がびっしりとまっている。相当の重さであろう。そんな物を動かそうと言うのだ。


「いいわ。でも、あたしだけじゃ、動かせそうに無いからあんたも手伝ってよね」

「あぁ、分かった、分かった」


 トウカとショウが、二人掛かりで本棚を持ち上げる。ショウはレベル99の魔道士だ。前衛職ぜんえいしょくに比べれば力は非力かもしれない。それでもショウはレベル99の基礎きそステータスを持つ。それは一般人を大いに上回る数値だ。一方トウカは前衛職だ。レベルが34もあれば王国の兵士と同等。いや、それ以上の力を出す。そんな二人が協力すれば本棚など容易たやすく動かせる。仮にツバサであれば、一人で持ち上げることも出来るだろう。


「トウカこっちだ」


 ショウとトウカが本棚を入り口へと動かす。扉を支える男性コンシェルジュの横からスライドさせる様に、最後は二人で押した。


「ふーう」


 安堵の息を漏らしたのはコンシェルジュの男性だ。男は額の汗を拭いながら腰を下ろした。それほどまでに切羽詰まった状況だったようだ。


「あんた。これじゃあ、外に出れないわよ」

「そうだな」


 ショウの目の前には扉をさえぎる、そびえ立つ本棚。これでは外に出られない。


「裏口を……、案内します……」


 コンシェルジュの男性は息を切らせながら、地べたから立ち上がった。そして歩き出す。


「さぁ、こっちです」


 コンシェルジュの男性にみちびかれるままに、ショウとトウカが付いて行く。スタッフオンリーの扉をくぐり、通路を進んだ。舞台袖ぶたいそでとはこう言う物なのだろうか。物が乱雑らんざつに置かれていた。ショウは見てはいけない物を目にしたようだ。


「ちょっと、お待ちください」


 コンシェルジュの男性が扉をゆっくりと開いた。この扉が外と繋がっていることはショウでもさっしが付いた。


「大丈夫そうです」


 そう言うと、コンシェルジュの男性が扉を全開にした。建物と建物の間の路地に繋がっていたのだ。


「右へ行くと表に出てしまうので、左の裏から抜けた方がいいかと思います」

「あぁ、助かった。トウカ、行くぞ」


 ショウが裏口から外へと出た。トウカも後に続く。

 黒いマントをひるがえ寝癖頭ねぐせあたまのショウ。メイド姿のトウカ。二人は城へと向かった。


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