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129話 第一章 第八節 新聞記事

 ショウとトウカが部屋を出ると階段をコトコト降りた。すると一階のロビーがざわめき立つ。


「お客様、今、外に出られるとあまりよろしくないかと……」


 コンシェルジュの男性は難しそうな顔をしてショウに告げた。


「何かあったのか?」


 ショウがコンシェルジュの男性に尋ねる。するとコンシェルジュの男性はしゃがみ込み姿を消した。受付台の中から何かを出そうとしているようだ。


「こちらを」


 コンシェルジュの男性の手には一部の新聞が握られていた。それをショウに差し出した。


「これがどうしたんだ?」


 ショウは不思議そうに新聞を受け取った。ショウの受け取った新聞はこの世界ではゴシップ紙として有名な新聞社の物だった。いろいろとあおっては部数を稼ぎ、それが利益に繋がっているのであろう。そんな新聞社が発行する新聞の一面に、トウカの記事が載っていたのだった。


「なんだこりゃ」


 ショウが間抜けそうな口ぶりで言う。その様子を見たトウカが新聞を覗き込もうとする。


「あんた、どうしたって言うの?」


 ショウはすぐさま、新聞をたたみ後ろに隠した。トウカにはあまり見せたくなかったからだ。


「いや、ちょっと待ってろ。読んで説明するから」

「そう、分かったわ」


 トウカは不思議そうな顔をしながら同意した。ショウは、トウカに背を向け新聞を開き記事を読み直した。


――城の襲撃犯は、昨日の英雄!?――


 これが新聞の見出しだった。


 ショウは、記事を読み進めた。内容は以下の通りだ。『以前、荒くれ者を撃退した女の子が使った魔封石は城の襲撃に使われた物と同一の物』と言うものだった。


ショウは同じ物で間違いはないのを知っている。だがしかし、入手経路が違う上に、トウカは城の防衛に当たっていた守備側だ。攻守がまったく逆だった。


「あんた、何よこれ?」


 ショウは記事に気を取られトウカの存在に気が付かなかった。トウカは背を向けるショウの脇から新聞の記事を目にしていた。


「何だ、お前。見たのか?」

「見たのか、じゃないわよ。何よこの記事。嘘っぱちじゃないのっ!」


 トウカは憤りを感じてるかのようにショウから新聞を奪った。


「トウカ、一回、部屋に戻ろう。外に出ない方がいい。昨日の町で歩いてた時のことを覚えているだろう? 新聞の効果は結構あるみたいだからな」


 ショウは、昨日の出来事を思い出して言った。新聞に『荒くれ者撃退』と書かれただけで町の有名人になった。では今回はどうだろう? 昨日と同様のことが起こる可能性がある。しかも、悪い意味でだ。


「分かったわ」


 トウカも部屋の戻ることを了承した。ショウは頷き、コンシェルジュに顔を向け声を発した。


「助かったよ。この新聞、貰って行ってもいいか?」

「えぇ、構いませんよ。もし外出するなら裏口を開けますので、お声掛けください」


 コンシェルジュに裏口があることを聞くとショウとトウカは部屋に戻ることにした。

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