124話 第一章 第三節 刑事ごっこ
「おい、ミサキ? ここは城じゃないか?」
「ええ、そうよ」
監獄、それは城の中に築かれている。城の地下、いわゆる地下牢と言うものだ。ショウとミサキは取り調べのため城へと移動した。
「城に行くなら城に行くと言ってくれよ。オレ、寝癖がひどいんだけどな」
ショウが頭を撫で付けながら言う。
「あら? ショウ君ってそういうの気にするの?」
ミサキが不思議そうにショウに尋ねた。
「まぁ、なんだって良いか」
ショウは寝癖に手を置きながら答えた。もう、すでに城まで来てしまっている。寝癖など直している暇など無い。そのまま行くしかない状態に置かれてしまった。
「で、ミサキ? 城には入れるんだよな」
「もちろんよ。ワトソン君」
「なんだよそれ?」
「刑事ごっこのつもりだけど」
「お前は、仕事を何だと思ってるんだ?」
「楽しむものだと思ってるけど」
今までのミサキの言動を考えれば、納得がいく。ミサキにとって仕事とは遊びの延長のようなのだと。
ショウとミサキが城の東側の門へと進むと番兵に呼び止められた。
「そこの男、その身なりで城に入場するのか?」
番兵の視線はショウの頭に向いていた。
「おい、ミサキ。寝癖が不味かったんじゃないのか?」
「そうね」
「そうね、じゃないだろ? どうするんだ?」
ミサキがアイテムボックスから羊皮紙を取り出すと、番兵に手渡した。
「これは、失礼。あなた方が反乱分子の取調べをされる。ホームズさんとワトソンさんですね」
ショウは呆れた表情となった。本当にワトソンになっている。ミサキの仕込みはバッチリのようだ。
「ええ、そうよ。出来れば牢まで案内していただけるかしら」
「えーと、あなたがホームズさんでよろしいですか?」
番兵は二人の名前を把握したが、どちらかは分からなかったようだ。
「ええ、そうよ。牢までお願いね」
「はい、分かりました。使いの者を用意しますので」
番兵は敬礼をした。そして、案内役を呼びに兵舎へと向かった。
「おい、ミサキ? ホントにオレはワトソンなのか?」
「ええ、そうよ。私の助手だからワトソンよ。名は体を表すっていうじゃない?」
確かに名が体を表している。しかし、意味が少し違うような気がするショウからはため息が溢れた。
「何で、そんな面倒なことするんだよ?」
「だって面白いじゃない。役を演じるなら形からって言うでしょ?」
「形じゃないぞ。名前が変わってる」
「いいじゃない。面白そうで」
「で、オレは助手として何をするんだ?」
「カツ丼でも出してあげたら、どう?」
ショウには、いろいろな要素が混ざりすぎて訳が分からなくなっていた。探偵ごっこのためにホームズを名乗るミサキ。取調べの代名詞カツ丼。ミサキの脳ミソを一度、開けてやりたいとショウは思った。
「お待たせいたしました。牢はこちらですので」
そう、案内役が告げると先を歩く。その歩みにショウとミサキがついて歩いた。