121話 プロローグ 第二節 スパイの決断
オフィスの一室。部屋の床はカーペットが引き詰められている。そんな部屋の真ん中に中年の男性がアーロンチェアに座っている。手には分厚い資料。目を細め資料を睨む。そんな時であった扉がノックされた。
「上田さん、失礼します。報告書はご覧になられましたか?」
「あぁ、今、確認してる」
上田は書類の束を机に放り、若いスーツ姿の男に身体を向けた。
「こちらが、追加の資料です」
そう若いスーツ姿の男言うと、新たに紙の束が上田の元に差し出された。
「また、追加の資料か?」
上田はペラペラと紙を捲り確認していく。
「城が攻められたそうではないか? 確か、魔封石だったな。しかもレベル5の魔法が入っているのにもかかわらず、なぜ失敗したんだ」
上田は顎に手をやり不思議そうに唸った。
「大方、システム部が支援したので間違えないでしょう」
「そうだな。あれを……、魔封石をもう一度使って城を攻撃させよう」
「まさか、もう一度って……。あれを行うのでしょうか?」
若いスーツ姿の男が驚きの顔をする。
「あぁ、そうだ。RBだ」
上田がRBと告げると、若いスーツ姿の男が黙って頷いた。その一言で分かったようだ。
「いつ、決行いたしましょう?」
「明日の早朝だ。すぐに準備を始めるのだ」
「分かりました。では、準備を始めます」
そうスーツ姿の男が告げると部屋を後にしたのだ。
「システム部め、ややこしくしてくれるのものだ」
上田はそうつぶやくと、椅子にもたれ掛かり天を仰ぐのだった。