120話 プロローグ 第一節
ショウはVRゲーム『ファイアーウォール』の住人だ。数年ほど前、ショウはリアルの世界で事故に遭遇したと記憶していた。その時の『ドーン』という音以降の記憶が無い。目を覚ましたのはこの『ファイアーウォール』と呼ばれるゲームの世界であった。このゲームは意識をゲームの中に移しこみ、まるで本当にゲームの中で生きていると錯覚すらするほどの物だ。そんな世界でショウは生き続けた。リアルで意識が無いまま寝ているより充実しているのは確かだろう。
そんな『ファイアーウォール』の存在理由をショウが知ったのは最近のことであった。このゲームはただのゲームではない……。ゲーム内にたびたび出現する『討伐ミッション』の対象であるモンスター。それはコンピューターウイルスを具現化させた物であったのだ。この国に侵入するコンピューターウイルスは『ファイアーウォール』にフィルターリングされ、モンスターとして現れる。そして、そのモンスター達をユーザーであるプレイヤーはゲームを楽しみながら倒す。新技術の詰まったコンピューターウイルスの駆逐装置であったのだ。
しかし、数日前、見えざる敵により『ファイアーウォール』のシステムが狙われた。初心者サーバーに具現化したモンスターは倒されること無くゲームの中で暴れまわった。事態を重く見た運営は討伐部隊を結成するも部隊は壊滅。窮地に陥った。そんな中、討伐部隊の生き残りのミサキと力を合わせ、ウイルスの撃破に成功したのであった。
しかし、スパイも諦めていなかったのだ。昨日、ゲームの中枢である城が攻め込まれた。ゲームの中にスパイの分身であるNPCが指示したのであろう。
だが、運営のミサキも城が攻められるのを警戒していた。無事に城の守りを固め防衛に成功し、ショウ達は安堵したのであった。
スパイが次なる作戦に動いているとは知らぬままに……。