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119話 エピローグ

「ん……。オレはスリープダガーで……」


 指輪の効果が発動したと同時にショウが目を覚ました。


「あんたっ! 大丈夫なわけ?」

「お、おう、大丈夫も何も、ピンピンしてるな」

「良かった」


 トウカは目を潤ませる。


「で、何があったんだ?」


 ショウは眠りについており何も覚えが無かったのだ。状況を聞くために尋ねた。


「あの……、その……。私の指輪が発動したんです……」


 ツバサが口を開いた。

「何が発動したんだ?」

「その……。寝ているショウ先輩に触ると魔法が出るようになってたんです……」

「おい、ツバサ。危ないだろう」

「そうなんです。今日、トウカさんが寝ているショウ先輩に触ろうしたんです……」

「ツバサ? お前あんまり考えてなかったんだろう?」

「はい……。ユウさんに意地悪がしたかったんです」

「そうか、ユウもお前のこと心配してたんだぞ。指輪を発動させようと試してたんだ」

「ユウさん。気がついてたんですか?」

「雑魚の考えそうなことなどわかりますわ。さすがに発動条件までは分かりませんでしたわ」

「そうだぞ、ツバサ。ユウなんて、指輪が発動して死んでもいいとまで言ってんだ」

「ショウ様、それは言わないで下さいませ」


 いつもクールなユウが慌てふためく。たまにはこんな姿のユウを見るのも悪くないとショウが思った。


「ユウはな、ツバサが指輪で後悔する姿が見たくなかったんだ。すごく心配してたんだ」

「ショウ様、もう言わないで下さいませ、意地悪ですわ」

 ユウが顔を赤らめそっぽを向くのだ。


「ユウさん……」

「で、ツバサ、よかったな。大事にならなくてな」

「でも、私。指輪のせいで、トウカさんに嫌われちゃいました……」


 ツバサは俯いていた。自分のしたことを後悔しているようだ。

 その言葉を聞いたトウカがメイド服のポケットから指輪を出したのだ。それを見たショウは背筋が冷たくなった。


「あたし、実は指輪を造ったの……」


 申し訳無さそうに口を開くトウカはツバサに言ったのだ。


「じゃあ、次はトウカさんが指輪を着ける番ですね……」


 ツバサは未だに元気が無いのだ。


「違うわ。この指輪。ツバサさん避けの呪いの指輪なの。だから付けちゃダメなの」


 トウカは指輪の効果を伝えたのだ。

「ツバサさん。ごめんなさい。あたし、ツバサさんに手を叩かれてむしゃくしゃしてたの。それでこんな指輪造っちゃったの……」

「トウカさん、私だって、急に手を叩いてごめんなさい。指輪のこと聞かれたくなかったんです……。まさかこんなことになるなんて思わなかったんです……」

「ツバサさん、許してくれる?」

「許すも何も、私が悪かったんです……」


 トウカもツバサも俯いているのだ。


「まぁ、助かったから良かったじゃないか。ツバサ助かったぞ。指輪の効果サンキュ

ーな」


 ショウが一言、ツバサに言う。ありがとう、と。


「ショウ先輩……」


 ツバサが泣き出したのだ。折角フォローしようと思ったのに、ツバサに泣き出され戸惑うしかない。


「ショウ君、ツバサちゃんにひどい事言ったの?」


 ミサキが馬車に乗って現れた。後ろにはトモも乗っているようだ。


「ち、違うぞ。ミサキ」

「あら、女の子泣かせて、悪い子ね」

「何を言ったのよ」


 不敵に微笑むミサキは言うのだ。もはや悪巧みしか考えていないような顔つきだ。


「ミサキよ。わたくしが説明してさしあげますわ」

「あらユウちゃん。それは楽しそうね」

「お前達、そんなに仲良かったか?」

「ユウちゃんは、大のお友達よ」

「そうですわ、ショウ様。ミサキはお友達ですわ」


 ユウから友達なんて言葉が出るとは思わず、ショウは驚いた。


「で、ミサキ? 今まで、何してたんだよ。こっちは大変だったんだぞ」

「あら、ショウ君。私達もがんばったのよ。ねっ、トモ?」

「ボクもがんばったんだからね」


 兎に角頑張ったしか言わない二人にショウは疑いの目を向けた。


「ショウ君、何よ、その目?」

「いや、何を頑張ったかと思ってな」

「ショウ君、この馬車の荷台の荷物なんだと思う?」

「何だ? 投石器でも入ってるか?」

「違うよ。大量のモンスターエッグよ」

「じゃあ、それも今回の襲撃に使われる予定だったと?」

「そうよ。敵の兵站を止めるのは基本中の基本よ」


 ミサキは胸を叩き自慢げに言う。


「まぁ、みんな頑張ったってことだな。助かったな」

「そうだ、ショウ様。指輪は外れましたわね」

「あぁ、そうだな。効果が発動してなくなったな」


 それを聞くとユウがアイテムボックスを漁りだした。ショウはすごくいやな予感がする。


「じゃあ、この指輪をはめる番ですね」

「ちょっと待て、ユウ。どうしてそうなるんだ?」

「だって、願い事なんでも聞いてくれるんですよね?」


 確かにユウに言った気がした。気のせいではない。確かに言っていた。


「ユウさんっ! もう指輪はダメですっ!」


 ツバサの発言を聞くと、ユウがニヤリと微笑んだのだ。


「そなた、さっきまでわたくしに好感を持ってたではなくて?」

「それと、これとは、別ですっ!」

「ショウ様、左手を出して下さいませ」

「だから、ダメですっ!」


 もう、ツバサはいつもの様子に戻っているのだ。ユウがわざとツバサを煽り立てているのではないかとショウは思った。


「雑魚は黙っててくださいませ」

「だから、雑魚って言わないで下さいっ!」

「トウカよ。言いたいことがあれば、雑魚にいってやりなさい」

「えっと……」


 トウカは特に言いたいことは無いようだ。


「トウカさん……。何かあるんですか?」


 ツバサは心配そうにトウカを見つめた。もう和解は終ってるはずなのだ。


「げっ、だから付けるなよ」


 ショウの指に指輪が通されたのだ。みんながトウカを見つめている一瞬の出来事であった。ユウの作戦は成功したようだ。


「だから、ユウさん。ダメですって!」


 ツバサが抗議している。


「トウカさん、指輪外して」


 ツバサに促されたトウカはショウの手を取り指輪を引っ張った。


「痛ててててっ」


 やはり呪いが掛けられているようだ。指輪を付けられたショウはうな垂れた。


「ちなみに、ユウ? 効果は何だ?」

「秘密ですわ」


 懸命に指輪を引っ張るトウカ。抗議の最中であるツバサ。抗議を受け流すユウ。ショウの周りはいつもの光景となっていたのだ。


「ショウ君、ハーレム楽しい?」


 茶化すミサキもいつもの光景だ。またしても指輪に振り回されるであろうショウからは笑顔がこぼれた。

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