表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/257

11話 第三章 第一節 取り残されたプレイヤー

 赤髪の少女、トウカは怒っていた。第一サーバーのはじまりの大地。太陽が降り注ぐ広場の真ん中トウカが吠える。

「なんでログアウトできないのよっ!」

 彼女は最近ファイアーウォールを始めたプレイヤーの一人。赤髪にツインテールが特徴の女剣士。現在のレベルは33、初心者と呼ぶに相応ふさわしいレベルであった。この世界ではトウカと名乗りゲームをしている女の子だ。

そんなトウカは現在ログアウトが出来ないと怒っている。

「もう、どうなってるのよっ!」

 怒りで、自分を抑えることが出来ないのか、声を出して怒っていた。

「あぁ、宿題がまだ終ってないのに……」

 学生にとっては宿題は仕事と同じ。それができないのは死活問題だ。ログアウト出来ないことにトウカは溜息を付いた。

「このままじゃ、明日の学校に宿題が間に合わないわ」

 宿題どころではないはずだ。下手をすれば明日の登校すら怪しい。しかし、トウカの目先にあるものは宿題。何としても宿題をやりたいようだ。

「よし、もう一度ログアウトよっ!」

 トウカはメニュー画面を開くとログアウトボタンを選択した。しかしログアウトのエフェクトが発生するだけで、ログアウトができない。第一サーバーはじまりの大地に有る国。その町の真ん中でピカピカ光るトウカは、NPCの見物人を集めての見世物のようになっている。

 この第一サーバーはじまりの大地は複数の国から成り立つ世界だ。道路は石畳が敷き詰められており、町の真ん中には運河がある。まるでヨーロッパの風景を模様したエリアである。建物がたくさん存在し、民家をアジトにしているプレイヤーも多くいるようだ。人口も、どのサーバーよりも多く、にぎやかな印象が強い。一塊りに人口と言ってしまったが、プレイヤーの数が多いのもそうだが、AIにより動かされているNPCの数も多い。兎に角にぎやかな町であった。

 そんな、にぎやかな町の真ん中でトウカはピカピカ光っているのだ。珍しい物を見るかのように周囲から視線を注がれていた。トウカ自身、ログアウトと宿題のことしか頭にないのか、周りの目などまったく気にしていなかった。

 そんな目立っているトウカを不気味に見つめる目があった。

 その不気味な目の正体は、世紀末の雑魚キャラのような風貌の盗賊だ。

「お頭、あの嬢ちゃん変ですぜ」

「そうだな、剣士なのに魔法でも使ってるように見える。話しが聞きたいとこだな」

「そうですぜ、拉致しましょうよ」

「よし分かった、こっちは何人だ?」

「えーと、全部で4人ですぜ」

「そう強そうな装備をしてないからたぶんそれなりのレベルだな。四人で行くぞ」

「分かりましたぜ」

 盗賊たちが、何かを企んでいた。

 盗賊に狙われていることなど知らぬトウカは未だにピカピカ光っている。

「よう、お嬢ちゃん。ちょっといいか?」

 先ほどの盗賊の一人がトウカに声を掛けた。

「何よ?」

 トウカは睨みつけるように盗賊を見た。ログアウト出来ない怒りをぶつけるかのようであった。

「そう怖い顔するなよ。ちょっと付き合ってもらうぜ」

 盗賊の一人がトウカの腕を掴んだ。

「放してっ!」

 トウカは盗賊の腕を振り払おうとするのだが、簡単には振りほどくことが出来ない。

「なかなか力が強いな、しょうがない」

 そう言い放つと、盗賊はトウカの口を手で押さえ、仲間達を呼び寄せた。

「んんーっ!」

 トウカは口を塞がれ声が出せなかった。そのまま盗賊に抱えられて、連れ去られた。

 トウカは口を押さえられているだけで、目では場所が確認できた。そこは王国の繁華街から路地を通り薄暗い、スラム街のような場所であった。その一角に立つ、木造のボロボロの建物が、盗賊のアジトのようだ。

 人通りの少ないこんなところでは、救助を求めたところで助けはこないだろう。だが実際はそうではなかった。連れ去られるより前、トウカがログアウトのエフェクトで光っている姿をショウが目撃していたのだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ