116話 第七章 第十節 援護
『ショウ様、どちらですの?』
ユウは迷子になっているようだ。
「ユウか? 今、北門を東側から攻撃してる」
『そうですの? もう少しで着きますわ』
「そうか? 助かる。気を付けて来いよ」
『まぁ、優しいお言葉』
「ところで、ユウ? 杖はあるのか? 幸福の杖じゃ上級魔法が使えないぞ」
ショウも幸福の杖を焦がした経験があるのだ。いつも幸福の杖を持つユウのことを心配したのだ。それどころかレベル制限で幸福の杖は装備できないのだ。ショウはすっかり忘れているのだ。
『大丈夫ですわ。雷の杖がありますので』
「い、雷か……」
ショウの顔が曇ったのだ。
『ショウ様、大丈夫ですわ。雷系の魔法は使いませんから』
「そ、それは、助かるな。悪いな」
雷の杖は炎の杖の兄弟のようなものだ。共にレベルは40。特化武器の一つだ。
「ショウ様、お待たせいたしましたわ」
ユウがショウの後ろで声を掛けたのだ。ユウが到着した。右手には雷の杖を携えている。
「助かったぞ。オレは剣士として戦うから、援護を頼むぞ。それと、魔法のレベル5までな。それを超えると目立つから、よくないらしいな」
「わかりましたわ」
堀の外にいる敵兵のほとんどが、炎対策に乏しい者のようだ。炎対策がしっかりしている者はすでに火の海を渡り城内に入った。ここに残されているのは火渡りが出来ない者なのだ。
ユウが呪文を唱えている。おそらくファイアーフィールドを繰り出すのであろう。ショウ自身は炎対策に抜かりは無い。自分の炎にやられてしまうほど滑稽ではない。ショウは敵陣に突撃したのだ。その時ショウの足元が火の海と化した。ショウの思った通りだ。さすがユウ。状況判断能力に長けている。
ショウは一人の剣士と対峙した。剣士は足元の火に注意が削がれていた。その隙をショウは見逃さなかった。
「えいっ!」
ショウが剣を振るうと、敵兵が剣圧に吹き飛んだ。まだまだ敵兵はたくさんいる。しかし、ショウにはレベル96の魔道士ユウの援護がある。戦力的に言えば申し分ない。
「ユウ頼むぞ」
「お任せあれ」
この世界の最強コンビが敵を打つ。