109話 第七節 第三章 ロッカールーム
トウカが息を切らせながらロッカールームにたどり着いた。誰もいないロッカールームは不気味その物だ。ランプの光りがよろめきながら灯っているだけだからだ。
トウカの目的はアイテムボックス。しかし、なかなかトウカはロッカールームに入ろうとしない。お化けが苦手のようだ。日頃は強がりばかり言っているが所詮は女の子だ。
「大丈夫、怖くない」
トウカは自分に言い聞かせるよう呟いた。そして、トウカは一歩一歩、歩みを進め、ロッカーの前までやって来た。
「早く開けなきゃ!」
トウカは早口で言う。とても急いでいるようだ。すぐにでもここから離れたいと言わんばかりに。
トウカは木の札を取り出した。それは魔法のロッカーキーだ。キーを差し込むとカチャリとロッカーが音を立て、解錠を報せた。すぐさまトウカがアイテムボックスから炎の剣を取り出した。しかし、炎の剣はトウカの手から滑り落ち、床へと着地した。
「あ、マント、部屋に置きっぱなしだった……」
トウカはすっかり忘れていた。昨日、着替えの時にクローゼットに着替えた服とマントを置きっぱなしにしていたことを。このままでは剣が振るえない。トウカは肩を落とした。
その時であった。ロッカールームのドアが勢いよく開いた。
「キャっ」
トウカが小さな悲鳴を上げた。余程驚いたのだろう。小さな悲鳴がロッカールームに行き渡る。そんなトウカが入り口へと目を配る。そこに立っているたのはツバサだった。勢いよくドアを開けた犯人はツバサだったのだ。
「トウカさんもここに?」
「ビ、ビックリして心臓が止まると思ったわ」
トウカはツバサと普通に会話を始めた。驚きのあまりケンカ中だということを忘れているようだ。
「トウカさん、さっきはごめんなさい。叩いたこと、後で理由をちゃんと話しますから、今は協力してください」
「分かったわ。後で、ちゃんと教えてよね」
トウカが返事をする姿を見てツバサは喜色を浮かべ、頷いた。そして、ツバサは、トウカの足元の炎の剣を拾うと、両手でトウカに差し出した。
「あたし、この剣使えないの……」
トウカが悲しそうな顔をして訴えた。
「大丈夫です。私、トウカさんの剣を用意してますから」
そう言うと、ツバサは炎の剣を足元に置き、自身のロッカーの鍵を開けた。ロッカーの中からアイテムボックスを取り出すと、中を漁り始めた。
「この太刀銘行安はレベル30からなのでトウカさんでも持てます」
アイテムボックスから出てきたのは、先程ツバサがトウカのために用意した刀だった。
「いいの?」
トウカの問いかけにツバサが頷く。
「では、行きますよ」
ツバサも愛用の漆黒の斧を取り出した。
刀を携えるのはレベル34のメイド服のトウカ。斧を担ぐのはレベル81の執事服のツバサ。
準備は整った。いざ決戦だ!