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108話 第七節 第二章 宴会

 トウカは今、宴会場にいる。そして、酔っ払い兵士の相手をしている真っ最中だ。酔っぱらい兵士からしてみればメイドなど、コンパニオンの一人としか思っていないのかもしれない。しかし、トウカは残念ながらコンパニオンではない。あまりにちょっかいを掛けてくる兵士にトウカの眉がぴりぴり動く。


 それにしても、武器を持たない男達を兵士と呼ぶのは難しい。とてもそうは見えない。ただの酔っぱらいだ。そもそも城の中では武器の携帯が出来ない。飲み会の席などもってのほかだろう。酔っぱらい同士の喧嘩に使われたらたまったものではないからだ。


「可愛らしい、メイドちゃん。お酌、お酌」


 顔を真っ赤にする兵士達。普段はまじめなのだが、ここぞとばかりにたがを外している。


「ちょっとー、おじさーん。酒臭いわ」


 トウカは鼻を摘まんだ。呑まずとも酒の臭いだけで酔いそうになるほど部屋には酒の臭気に満されていた。


「さあ、早く、早く」


 酔っぱらい兵士からは催促さいそくの嵐だ。しかし、トウカはなかなか上手におしゃくができない。ビールをそそげば泡立ちあふれ、ワインを注げばグラスにいっぱい、波々《なみなみ》となり、良いところがまるでない。普段の行いが目に見える。ツバサなら、そつなく(・・・・)こなすだろう。


その時であった。望楼ぼうろうの鐘が鳴る。


「敵襲っ!」


 兵士達が叫んだ。宴会の最中でのまさかの敵襲。間が悪いにもほどが有る。酒で顔を赤くする兵士、千鳥足の兵士。すでに寝息を立てている兵士すらいる。まったく役に立たないと言っても過言ではない。


「メイドちゃんは、俺が守るぞー」


 兵士の一人がトウカの前に立ち塞がる。しかしトウカの目の前の兵士はふらふらだ。全く頼りになどならない。兵士たちには武器もない。宴会場の壁には、いざこざを防ぐ為に武器は取り除かれていた。武器庫に取りに行くしか方法がない。


 トウカも例外ではない。アイテムボックスがロッカールームに置かれたままになっている。そこまで行かねば、武器がない。


 トウカは意を決するように頷いた。自分の出番がきたと言わんばかりに。トウカは酔っぱらい兵士を押し退け部屋の出口へと向かう。彼女の向かう先は、おそらくロッカールームだろう。

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