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106話 第六章 第八節 お嬢様の好み

「お嬢様、いかがでしょうか?」


 お嬢様にうかがいを立てるのはツバサだ。ツバサは今日もお嬢様のおもちゃにされている。


「まずまずね。私はお茶が飲みたいわ。私の好きなお紅茶の銘柄めいがらは覚えてまして?」


 意地悪げな笑みを浮かべるお嬢様。ツバサを試しているに違いない。


「……えーと、あの……」

「あなた、使えないわね。もういいわ。下がってちょうだい!」


 お嬢様は鬱憤うっぷんを晴らすかのようにツバサを怒鳴りつけ、退室を命じた。


「……失礼いたしました」


 ツバサがうつ向きながらお嬢様の部屋を後にする。追い出されたと言った方が正しいのかもしれない。今日は、トウカの件だってある。ツバサの涙腺が緩む。



「ツバサ君、お嬢様はどうでしたか?」


 部屋の外では執事長が待っていた。ツバサを心配してのことであろう。常習的に行われるお嬢様のお遊び。執事長も頭を悩ませているのかもしれない。


「はい、お嬢様の好みの紅茶が答えられなくて怒られてしまいました」

「そうでしたか。では、上出来ですな」


 執事長は怒られたはずのツバサに上出来だと伝えた。そんなツバサが不思議そうに言う。


「上出来とは、どういうことですか?」

「それはですね。礼儀作法のミスを指摘出来なくなったお嬢様がよく使う手です。まれに執事経験が有る方も見えるのですよ。そういう方への文句の言い方ですから。いくら執事経験があろうともお嬢様の好みを知るはずがありませんから」

「確かにそうですね」

「では、執務室でお教えいたします。お嬢様は、時間帯や気温、天気で銘柄を変えますので。ここでは説明仕切れませんから」

「分かりました。お願いします」


 ツバサと執事長が執務室へと移動を始めた。すると廊下でメイド服を着たトウカとすれ違う。


「あ、トウカさん」


 ツバサがトウカに声を掛けた。しかし、トウカはツバサに視線を合わせることなく過ぎ去った。


「トウカさん……」


 ツバサがうつむく。なぜ、こんなことになってしまったんだろう。素直に謝ればいい。しかし、ツバサには言えないこと(・・・・・・)があるようだ。

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