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105話 第六章 第七節 宴の準備

 トウカは、指輪を作り終えると通常業務に戻った。現在、トウカがいるのは城の調理場。いくつものかまどに火がべられている。城の人たちのお腹を満たすにはこれほど多くの竈が必要だと言うことなのだろう。


「トウカさんですね。今日は忙しいですよ。がんばりましょうね」


 メイドの一人がトウカに話しかけた。


「今日は忙しいの?」


 いくら無頓着むとんちゃくなトウカでも気が付くだろう。昨日とは様子が違うことに。昨日はメイド達とのわついた話に業務のほとんどを費やしたのだが、今日は様子が違う。昨日と打って変わって忙しい。


「あら? トウカさんはこのために応援にしたんじゃないの?」


 このためと言われてもトウカには何の為なのか皆目検討も付かないだろう。ミサキからそんな話など聞かされていなかったからだ。


「えーと、なんだっけ?」


 トウカは素直に知らないことを伝えた。


「今日は城の兵士達の懇親会が企画されてますのよ。夜のうたげで料理を出さないといけませんし、やることがたくさんです」


 今日は以前から企画されていた兵士の懇親会の日のようだ。もしかすると、この懇親会の存在すらミサキが考えた物かもしれない。トウカとツバサを城に派遣する口述のために。


「あたしは、何をすればいいの?」


 トウカがメイドにたずねた。


「じゃあ、トウカさんは、お酒を運んでください。これから宴会は始まりますから、そろそろ運んで置かないと。そうそう、宴会が始まったら酔っ払い相手になるので、セクハラには気をつけてくださいね」


 先輩メイドがトウカにアドバイスをした。どこの世界でも酔っ払いはたちが悪い。この世界も例外ではないようだ。


「わかったわ。宴会場まで運ぶわ」


 そう言うとトウカはドラム缶ほどある酒樽さかだるを抱え持ち上げた。


「ト、トウカさん……。怪力ね……」


 メイドが唖然となる。無理もない。トウカが軽々と酒樽を抱え宙に上げたからだ。トウカはこれでもレベル34の剣士。腕力なら、そこらの兵士には負けやしない。仮にツバサなら片手で持ち上げるかもしれないが。


「こ、これ空だったわ……」


 トウカが恥ずかしそうに言った。怪力女などと思われないよう誤魔化そうとする。しかし、酒樽の中からはちゃぽんちゃぽんと音が聞こえる。空のはずがない。


「で、でも、お酒入ってそうよ?」


 メイドが空でないことを指摘した。


「そ、その……。空のお酒、片付けてきます」


 それ以上の突っ込みを避けるかのように、トウカは酒で満たされた酒樽を軽々と持ち上げ調理場を飛び出した。証拠隠滅を図るのに成功した。


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