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104話 第六章 第六節 嫉妬の指輪

 トウカは一人、歩く。目の前には指輪屋。トウカは城の中にある指輪屋を目指しているようだ。ツバサが以前作った指輪もここで造られた物だった。


 指輪屋に着くと、トウカは指輪職人に声を掛けた。


「すみません。指輪を造りたいんですが」

「お嬢さん、彼へのプレゼントですか?」

「ち、違うわよっ!」


 トウカは顔を赤らめ、否定する。


「では、何か、付与する効果はありますか?」


 指輪職人は、そう尋ねた。普段来る客の多くが指輪の効果を望むのだろう。指輪職人にしてみれば、いつも聞く常套句じょうとうくのようだ。


「特定の人を近づけないようにする指輪はあるの?」


 トウカは余程、特別な効果の指輪を欲しているようだ。そんな指輪あるとは思えない。

「嫉妬系の指輪ですか? ありますよ。人気ですので」


 あるようだ。しかも、人気と言うではないか。不思議なものだ。そして、指輪職人の中では嫉妬系と愛称まで付くほどに需要がある物のようであった。皆、考えることは同じと言うこのなのだろう。


「それって、どんな効果なの?」


 トウカが身を乗り出して聞く。


「いろいろとありますよ。たとえば、特定の人や物が近づくと指輪の持ち主が不機嫌になるような物とかですかね。お望みの効果があれば特注で造れますし」

「不機嫌になる指輪ってどういうものなの?」

「簡単に言うと、ストレスを脳に送り込むようなものだと考えたら分かりやすいと思いますよ」

「そうなのね。分かったわ。それにするわ」


 トウカは、不機嫌になる指輪を注文した。


「かしこまりました」


 指輪職人は返事をすると一枚の羊皮紙を取り出した。


「では、何を避ける(・・・・・)指輪にしますか。物の名称や、人であれば氏名を練り込むことで、効果の付与ができます。そちらの紙にお書き下さい」

「この紙でいいのね」


 トウカはペンを持ち指輪職人に尋ねた。


左様さようでございます」


 トウカはうなずくと、ペンを走らせた。すらすらと書き進める。そして、ペンを休めた。


 トウカは書き終わった羊皮紙を指輪職人に返した。羊皮紙には『ツバサ』の文字が浮かんでいた。


「間違いはございませんか? キャンセルは効きませんよ」

「それでいいわ」


 トウカは未だに根に持っているのだろう。早く城に来たのも、この嫉妬の指輪を造るのが目的であったようだ。


「では、最後に着脱可能までの期間ですが、いかがされますか? あまり長期ですとお時間を頂くかたちとなりますが」

「すぐにでも欲しいから、短いのでいいわ」


 指輪職人の質問は呪いの期間のことだろう。トウカは嫉妬の指輪をすぐにでも欲しいと最短でいいと頼み込む。


「分かりました。最短ですと、5日間程度です。では、すぐ出来ますので、しばしお待ちを」


 指輪職人は羊皮紙の上に指輪を乗せ、手をかざす。すると『ツバサ』の文字が書かれた羊皮紙がいきなり燃え上がり、指輪がキラリと光りを纏った。


「お待たせいたしました。こちらが嫉妬系の指輪となっております。使い方にはご注意を、何かあっても責任は取れませんので。効果の方は責任を取りますよ。しっかり効くはずです」


 指輪職人は紺色の箱に納められた銀色の指輪を示しながら言った。不思議なことに指輪職人は効果の保証より先に注意点を伝えるのだ。まるで注意点の方が重要と言わんばかりだ。


 トウカは指輪を受け取ると、メイド服のポケットに忍ばせたのだった。

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