103話 第六章 第五節 刀
「じゃあ、お前達には城に行ってもらうぞ。オレも行きたいんだが、そういう訳にいかないらしいからな」
ショウは城への立ち入りの許可が出ていない。こんな時に城に侵入しようものなら、不審者に間違われるに違いない。ショウの任務は城外での警護。ミサキ曰く、出来れば敵のアジトを強襲したいと思うくらいだ。
「分かったわ。あたしは、城に行くわ」
トウカが告げると、ササクサと歩き出した。
「おい、ツバサを置いてくなよ」
トウカは振り返りもしない。そのまま道具屋を後にした。
「ツバサ? トウカと何かあったのか?」
「あの……、その……」
ツバサは何を説明したらよいのか戸惑っているように感じられた。ツバサが話したくないことだ。ショウは無理に聞かなかった。
ツバサは、ショウの質問を拒むかのように店の方を向き、店主に話しかけた。
「あの、おじさん。剣を見せてもらえますか?」
「ツバサどうしたんだ? また炎の剣か?」
「いえ、違います。刀を一振り貰おうと思います」
「どうしたんだ? 剣に変えるのか?」
「いえ、トウカさん用のです」
「トウカには炎の剣があるだろう?」
「はい、でも今のトウカさん、マントしてないので、炎の剣が持てないはずなんです。一振り予備で持っておいたほうがいいと思いますから」
「そうだな、ツバサ、一本選んでやりな」
「はい」
ツバサは微笑んだ。今日はずっと沈んだままでショウは心配していた。
「おじさん。これお願いです」
ツバサが刀を一振り選び出した。それはレベル30からの刀だった。
「お嬢ちゃん、これレベル30からの装備だよ。そんじょそこらの人間じゃ使えないけど、大丈夫かな?」
「はい、大丈夫です」
ツバサはトウカの顔を思い浮かべながら言ったのだろう。
「毎度あり」
ツバサが鞘に収まった刀を、店主から受け取った。
「じゃあ、ツバサ。トウカのことを頼むな」
「はい、任せてください」
ツバサは無い胸を叩き、自信を持って言う。そして、ショウと別れ城へと足を進めた。