102話 第六章 第四節 品切れ
ショウ達三人は宿屋を後にし、道具屋へと向かう。
「おい、トウカ? お前どうしたんだよ」
ショウの横を歩くトウカはやたらとショウの腕に絡み付こうとしている。そして、腕を絡ませるたびに、後ろを歩くツバサを見る。いや、睨むというのが正しいのかもしれない。
「いいじゃない」
トウカはそう伝えると、すぐに後方を歩くツバサに視線を向けた。後方のツバサは俯き元気がない。まるで歩く屍だ。
「あんた、今日は何を買うのよ」
「あぁ、今日か? 炎対策の装備をだな」
「あたしは、氷の靴を履いてるわ。それじゃ足りないの?」
「ツバサは履いてないだろう? 主にツバサの装備だな」
ショウの声が後を歩くツバサに届く。すると、ツバサの表情が幾分よくなった。
「ツバサさん、ツバサさんって、あんた何よっ!」
そんなトウカの文句に、ツバサが萎れた花のように俯き下を見る。
「トウカ? どうしたんだ?」
「何でもないわっ!」
そんなやり取りの中、一行は道具屋に着いた。
「オヤジ、炎対策の装備が欲しいんだが」
ショウの目当ては、炎対策の装備。敵が城を狙う際、まず間違いなく流出した魔封石を使うはずだと考えた。炎対策をするためにここへやって来た。
「兄ちゃん。実はな。炎対策用の装備が今、大人気みたいなんだ。うちは売り切れだ」
店主がそう言うのだ。
ショウは昨日のユウとの会話を思い出した。ユウなら炎対策用の装備を揃えるのだと。まさに、それが現実化しているようだ。
「他の店の奴らに聞いてみてもいいぜ? 当然マージンは貰うがな」
店主が手数料を寄越せと言う。客を他の店に紹介しただけでは利益には繋がらないから仕方がないことなのだろう。利益を欲する商人だ。
「あぁ、構わない。急ぎで欲しいからな」
ショウも、もたもたしている訳にはいかない。すぐにでも城が攻められるかもしれないからだ。手に入るなら早く欲しいと店主に頼んだ。
「ちょっと待ってな。フレンドリーコールで呼んでみるからさ」
店主は、フレンドリーコールで、商人仲間に連絡しているようだ。
「何? お前の店でも買占めか?」
ショウは店主の会話に耳を傾けた。
「じゃあ、どこの店でも品切れって訳か? あぁ、分かった。客にはそう伝える」
店主はフレンドリーコールを切ったようだ。
「兄ちゃん、悪いがどこも品切れのようだ。知り合いの所も売り切れで、こんなことになるなら吹っかければ良かったな」
店主がショウにそう伝えた。さすが商人だ。これだけ買占めが起こるなら値段を吊り上げればよかったとまで言うのだ。
「兄ちゃん、どうするよ? 何か他には必要か?」
店主が、ショウに他の商品を薦める。
「まぁ、特にないな」
「そうかい? また贔屓に頼むよ」
店主が言った。