101話 第六章 第三節 当て付け
ショウがムクリと動き出す。両手を上げて延びをしながら目を覚ます。
「おう、二人とも。ログインしたのか?」
ショウがトウカとツバサに話しかけた。
「あんた、何寝てるのよ」
トウカが椅子に座るショウに突然、抱きついた。トウカの視線はツバサに向けられる。まるでツバサに当て付けるかのようだ。
「ト、トウカさん……」
ツバサはトウカに抗議をしようとしたのだろう。しかし、その後の言葉が続かない。
「おい、トウカ離れろ。いきなりなんだよ」
「何でもないわ」
ショウが絡みつくトウカを振り払らう。普段のトウカではあり得ない行動だろうが、当て付けの意味を含めば実行できるようだ。
「それにしてもタイミングが同じなんて仲がいいな」
現在、トウカとツバサは冷戦状態。先ほどまでもやり取りを知らないショウは、いつもの通り接したのだ。
「別に仲なんて良くないわっ!」
トウカが強く否定する。
「あの……、その……」
一方、ツバサは何も言うことが出来ず俯いていた。
「なんだお前達? どうしたんだ?」
ショウは昨日まで二人の仲は上手く行っていると思っていた。しかし、今日の二人の様子は間違いなくおかしい。日頃、鈍感のショウでも気が付くほどだ。
「まぁ、いいか。それで、城の件だけどな。やっぱり狙われているみたいだ」
「あんた? もしかして今日も城に行かないといけないの?」
「あぁ、ミサキの話しだと。城が狙われてるらしいからな」
「で、どうするのよ?」
「まぁ、とりあえず装備を揃えないと行けないからな。道具屋に行くぞ」
ショウが椅子から立ち上がり、トウカに言う。
「おい、ツバサ? どうしたんだ? 気分でも悪いのか?」
「えっと……、その……」
ツバサからは明確な回答は返ってこなかった。
「じゃあ、二人とも出発だ」
ショウの合図でトウカとツバサが移動することになった。