天使がやってきた夜
旦那が女を連れて帰ってきた
なんにも 悪びれることもなく
誰 ?
私が言う
おまえにも 見えるの?
このこは 天使なんだ
はあ?
どうみたって ただの女だ
横から 見ても
縦から 見ても
前から後ろから 見ても こいつは ただの女
服こそ 真っ白いワンピースを着ているが
羽も 頭の上についてる 輪っかみたいのもないじゃない???
でも 旦那は 普通に いつものように テーブルについて 夕飯を待ちながら 新聞なんぞを読んでいる
天使とやらは そんな旦那の横にちゃっかり座って くっついている
どっからどうみたって キャパクラじゃないかよ!!!
私の怒りは それはそれは はんぱない!!
旦那は 用意してあったおかずに箸をつける
本当はとりかえしてやりたい
でも 黙って見ていた
あんたさあ、この子のご飯なんてないわよ
大丈夫よね だって天使なんだから
うん、なんにもいらないよ
だんなは ひとりで 大好きなハンバーグをほおばる
ごく普通に いつもと同じように 旦那は スポーツニュースを見て
野球チームの勝ち負けに一喜一憂し お風呂に行った
さて 私と 天使と リビングにいるわけで
なんとなく あまりに普通の旦那に 怒っている自分もばからしくなり
その天使にはなしかけてみた
ねえ、あなた いくつ?
どこで知り合ったの?
どこのお店の子?
しかし天使は 黙って私の顔をみているだけだ
なによ あんた ばかにしてんの?と怒りたいが
そんなことを言ったら なぜか 私が負けてしまうきがして こっちも黙って 彼女を見ていた
そのうち お風呂からあがった旦那が 登場
明日早いからもう寝るわ
と いう
この天使 どこに寝るのよ
わたしがいう
俺の部屋だよ
はあ?????
旦那には 趣味の部屋と称する3畳ほどの元納戸の部屋があって
週末など そこに閉じこもってはそこで寝ているのだが・・・
二人きりで その狭い部屋に????でもなんということもなく 旦那が部屋に行くと
天使とやらもくっついていった
私としては納得がいかない
なんで 同じ屋根の下に 妻である私がひとりで寝て
旦那が他の女と寝ているなんて
異常すぎる状況ではないの??????
夜中だというのに目は冴え冴え
私はそっと部屋のドアをあけてみた
天使は白いワンピースのまま座っていた
旦那は天使の足の上に頭を乗せてすやすやと寝ているではないか
天使はそんな旦那の頭に手を置いて
まるで 赤ん坊のような旦那を いつくしむように
不思議な絵だった・・・・・
いけない いけない こんなこと認めてはいけないのだ
悶々としたまま 私の夜は 明けて行った
翌日 旦那と天使は起きてきた
すっかりよく寝た旦那は 上機嫌で支度をしている
天使効果か?
いけない いけない また 認めるところだった
ねえ この子いつまで いるの?
ずっとだよ
はああああ???????
ご飯も食べなきゃ お風呂も入らない トイレも行かない 寝ない
うーーーん 不思議だ
だけど 天使特有の 羽もなければわっかもない
そんなことを考えているうちに 旦那は天使を連れて会社に行った
ええ!!!! あれを連れていくの???
だけど 道をすれちがっていくひとたちは 普通に歩いている
そういえば 言われた 昨日
おまえ 見えるの?って
何だろうそれ・・・・・
なんとなく ぞっとしてきた
私はその日 友達の家に おひるをごちそうになりに行く約束をしていた
手早く家事を済ませ
友達の家に行く
友達の家に行着いて 私は彼女にいった
旦那が女を連れてかえってきたの
だけど天使だっていうのよ
友達は大爆笑したあと 私に言った
あんた、お人よしもいい加減にしないと 離婚されちゃうよ?
だよね・・・・誰に言っても 私がおかしいよね
私はそうだよねと言って 友達の説教をきいていた
だふん 今日も旦那は天使を連れて帰ってくるのだろう・・・・
私は今後どうやって その天使と暮らしたらいいのか・・・・・?
そして なぜ私は 最初あんなに怒りを覚えていたのに
今は そうでもないのだろうか?
その夜 また 二人は帰ってきた
旦那は疲れた顔でただいま
そして天使は黙って
旦那にきいてみた
天使はどうしてあなたといるの?
この子とであってから いいことばかりだよ
昇進はするし パチンコは勝つしさあ
とニコニコしている
天使はまた 食事をしている旦那の脇に座ってじーっとしている
ひとことも話さずに
そして また 旦那がお風呂にはいっているときに きいてみた
ねえ、天使 Angel いったい何者?
するとしばらくして 天使は本棚を指差した
なんだろうと思っていたけれど 旦那があがってきたので そこで話は終わってしまった
また二人は納戸へ
私は寝室へ
また あまり眠れぬまま 朝になり 二人は当たり前のように 行ってきますと出勤し
私はひととおり家事を終わらせた後 夕べ天使が指差した 本棚を見ていた
ずいぶん長い間 本も読んでいない
昔はあんなに大好きだったのに
私はなんとなく 一冊ずつ 本を出してはみていくことにした
懐かしい表紙たち
懐かしい本の匂い
私はずっと昔に戻ったきがしていた
そして一冊の本からパラパラと堕ちた写真と絵ハガキ
あーあと思い 拾い集めたその中に
白いワンピースに茶色い長い髪
その姿は あの 天使と似ている・・・・
そして その天使は
小学生の時 学芸発表会で天使を演じた私の姿
そうです・・・・
天使は あの時代の私の姿
教えにきたのです
ずっと忘れていた いつくしみを
その夜 旦那は独りでかえってきた
私はきいた
天使は?
はあ? なんのこと?
天使って おまえ おかしいんじゃない?
大笑いされた・・・・・・
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