おそよう
ヤマト視点ですねぇ。一部だけ覗いて
それは俺たちが一歩踏み出してしまったからかもしれない。
しかしそんなことを今更考えたところで何も変わらない。
今はこの暗い空間から抜け出す事だけを考えないといけない。
団長としてこの団を守るために…。
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「おはよう…」
「ああ、おそよう」
午後1時ぐらいだろうか。昼飯になったら起こしてくれと言っていたはずなのに誰も起こしに来てくれなかったのでしびれを切らして起きてきたんだが、なぜか広間にはリーフしかいなかった。
「他のみんなは?」
「俺とお前とマカイとカズ以外は全員緊急任務だ」
「緊急任務?」
「ああ…なんか大変らしい」
そういってリーフは俺に向かって一枚の紙を投げてきた。
「おっと…ん?メモか?これ」
紙には『緊急任務!しばらく留守にする!』と書きなぐられていた。
「起きたらあった」
さっきからDSをしながらそっけなく返すリーフ。やっているのはモンハンか…。
「起きたらって…いつ起きたんだ?」
「さっき。正確に言うと11時半だ」
そういえばこいつは寝起きが悪いんだった。
「はぁ…んじゃ昼飯は…」
「ん」
振り返らずにリーフが机を指差した。そこにはビニール袋があり中にはパンがあった。
「買ってきた」
「え、リーフが?」
「なんだ」
「いや、外に出るとは」
「…冷蔵庫に材料があってもこのメンバーじゃ何も作れないだろ。3人とも起きてこないし…っていうかそこまで外に出ないわけでもない」
「いや、出てないだろ…まあ、ありがとな」
そういって袋の中からあんぱんを取り出す。やけに量が多いのは3人前の量を容易に食べてしまう奴がいるからだろう。
リーフの向かい側に座り食べ始める。
………
……
…
無言がきつい!
「ふぁ~おはよう」
「おそよう」
声がした方を見るとカズが起きてきたらしい。ナイス!!
「おそよう」
「あれ?みんなは?」
「緊急任務だってよ」
「そう…あ、パンだぁ!」
そういってパンに飛びつくカズ。流石だ。
「ほれ、リーフがふぁってふぃたの?(これ、リーフが買ってきたの?)」
「ああ」
「…ごくっ…珍しい」
「なんだよ!二人ともそんなに俺が外に出ることが珍しいか!?」
「うん」
正直にうなずくカズ。
「う…本島に引き籠ってやろうかな…」
ラーラーラーララッラーラーララ(ロスタイムメモリー)
ポケットの中のスマホが鳴り出した。
「もしもし…」
「ヤマト!大変なんだ!」
聞こえてきたのは焦ったようなイシカの声だった。
「イシカ!?どうしたんだ!」
「…くっ…いますぐリーフたちを…連れてきてく…ザーザー」
イシカの声が途切れノイズが響く。
「どうしたんだ!?イシカ!?おい!」
「イシカがどうした!」
「分かんねぇ。けど今すぐいかないと!」
「俺マカイさん呼んでくる!」
そういってカズは部屋の方に走っていく。
スマホはまだつながっている。この電波を頼りにどうにか…。
「どうした!?」
すぐにカズがマカイを連れて戻ってきた。
「イシカ達が危ない!詳しいことは分からないが…とにかくあっちに行かないといけない!このスマホの電波をたどれないか!?」
そういってマカイにスマホを渡す。しかしマカイは険しい顔で「自分一人じゃ無理だ」といった。
「あいつが帰ってくれば話は別だがな」
「あいつ…か」
名前はでなくとも誰だかはすぐにわかった。
「けれど、そんなにタイミングよく帰ってくるわけ…「たっだいまー!」帰ってきた!?」
カズの言うとおりだと思っていた俺だがこの偶然は逆にありがたい。
「エルク!グットタイミングだ!」
「ん?なに?」
「このスマホの電波をたどってくれ!事情はあとだ!頼む!」
「…なんか大変そうだな。いいぞ。マカイ」
「目つきはかっこいいが手に持ってるもので台無しだぞ」
マカイの華麗なツッコミでエルクの手に持っている袋が目に入る…。
「いいじゃないか!そんなの!」
「まあ、一刻をあらそうからそのことはあとでな」
そういってマカイとエルクはスマホを持って部屋に向かう。
無事でいてくれ。イシカ…みんなっ!