取り残された
私は特に何もせず淡々と日々を過ごしていただけなのに…
なぜこうも問題ごとに巻き込まれるの?
ここは私が通うカゲロウ中学校。通称放浪学校。
とくにかわったことはない普通の学校だが、ただ一つ問題があるとすればここの生徒はよくいなくなるということだろうか。
普通は大問題に発展しかねないそんな問題もここの先生たちは軽く受け止めてしまう。
当たり前だ、だってここの生徒たちはみなしご同然なのだから。けれど、親がいないというわけでもない。私たちに親は興味がないのだ。だから先生たちもいなくなったらいなくなったという神経なのだ。
「はぁ」
思わずため息が出る。私は今夜の学校にいる。なぜかって?保健室で寝ていたらいつのまにか先生すらも帰ってしまったからである。
今日はたまたま保険の先生は休んでて誰も気づかなかったのであろう。
それにしても暗い。保健室から出る勇気さえない。
「さて、どうしよっかな?」
そんなことをぼやいているとドアののぞき窓に人影が映る。
「!?だれ!」
「うわ!?誰かいる!?」
私が叫ぶとドアの前の人はあわてている。
「な、なんでこんな時間に人が…?」
そう思ってドアに近づきゆっくり開けてみると…。
「へ?」
「あ」
見事に目が合ってしまった。
しかも…
「じょ、女性!?」
そう、目の前にいたのは暗くてよくわからないが来ている制服からして女性。そして私は女性が大の苦手なのだ。
「ひっ!」
急いでドアを閉める。声からすると中性的だったので警戒しないで開けたが…まさか、こうなるとは。
「あ…えっと、驚かして…すいません」
ドアの向こうから謝罪の言葉が聞こえる。
「あの…開けてもらえないかな?」
「…」
「え、えっと…」
私が何もしゃべらないでいるとあたふたし始めた。
「怪しい者じゃないんで…」
「帰ってください」
「か、帰れないんです!取り残されて」
「…」
仕方がないのでドアを開ける。
「…」
「…あ、その…あ、ありがとう、ございます…?」
何故か疑問形でお礼を言われる。
とにかく女性を中へと入れる。
しかし会話はできず。無言。
いれるんじゃなかった。と後悔しはじめたとき。
「お、俺イシカっていうんだけど…えっと…君は…?」
「…ゆきひな」
会話をできるだけ短くする。人と話すのなんか何年振りだろう。
「ゆきひな…えっと、じゃあ…その、外に出る?」
「どうやって…?」
「簡単に窓から…」
「校門のカギは?」
「…や、山の方に…」
イシカがいっているのはこの校舎の裏にある山の事だろう。なぜか裏には塀がなく山がむき出しになっている状態だ。
「こんな夜中にそこを歩くの?」
「大丈夫だよ。俺の仲間も…っといけないけない」
「仲間?」
「あ、いやこっちの話。とにかく俺も懐中電灯もってるし…な?」
この短時間で随分と軽く話すようになったなと思いながらも首を縦に振る。すると、イシカは満足したのか「それじゃあ、行こう」といって窓に手をかけた。
「…そういえば、なんで私と会うまで外に出なかったの」
私がそういうとイシカはギクッと音が出るんじゃないかというぐらい肩を上げ、奮えた声でこう言った。
「ひ、一人じゃ心細かったから…」
少々ふに落ちなかったけどこのまま一人でここにいることもできないのでついていく。
校舎を回り山の入口へと向かう。
そしてそのまま山へと入り何分か歩く。
「はぁ…はぁ…」
「つかれた?」
「ちょ、ちょっと…」
私が息を切らしていると前を歩いていたイシカが振り向き言った。
「もう少しだからな…頑張れ」
「わか…ってる」
私がそう答えるとイシカはまた歩き出す。
その後について私も足を進める。
それから数分後。
森の外に出る気配もなく、逆にどんどん奥へ進んでいる気がする。
しかし、こんなところで一人になるのも嫌なのでついてきたが…いったいいつ着くの?
そんなことを考えながら進んでいるとイシカが急に立ち止まった。
「な、なに?」
「見えたぞ」
そういってイシカが指したのは…。
「家…?」
ぽっかり空いた空間にぽつんとたつ赤い家だった。
ゆきひなの口調が分からなくなったwwww