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囚われの令嬢?

・おことわり

今話は話の展開上、今までと比べると若干性的なものが内容に含まれます。

苦手な方は回れ右をするか、飛ばして簡単な内容にまとめたあとがきをお読み下さい。




「……んんぅ」

 ガンガンと殴りつけられているかのような頭痛に顔をしかめつつ、レイルことレイラが身を起こしたのは石造りの壁に囲まれた小さな一室だった。もらした声がくぐもったものになっていたのは布をかまされていたから。

(ご丁寧に手足もか)

 身じろぎして確認してみれば縛られているらしく手も足も自由に動かない。直に見ることが出来れば縛られているかどうかはわかるのだが自由にならない身体の上には布がかぶせられており首から下が確認できなかったのだ。

(おじいさまの手の者とは手口が違うみたいだが――)

 そもそも祖父に捕まったのであれば、もっと手荒い歓迎を受けている筈だとレイラは思う。王女への告白によって計画を台無しにされているのだ、家族の情愛といったものとは無縁な老人の心情を考えれば見せしめをかねて何かされていても不思議ではない。

(では居るはずもない侍女に不審を抱いた兵に――これもないな)

 レイラは眠り薬を飲まされて拉致されたのだ。忍び込んだ密偵か何かだと思われていたのなら回りくどいことなどせずに兵で囲んで捕らえてしまえば良いだけのことであるし、縛られているとはいえ密偵をわざわざベッド寝かせるとは考えづらい。

(まさか……)

 消去法で誘拐された理由を推理していたレイラが次ぎに思い至ったのは、レイラの身体を目当てにしたという可能性。

(まぁ、確かに顔も悪くないとは思うし、胸も最近布で締め付けて誤魔化すのが難しくなってはきているが……)

 今のレイラは一使用人の格好をしているのだ。寝かされていたベッドは簡素だが背中の感じる弾力からしてもそれなりに上質の物とわかる。こんなベッドを備えた場内の一室を利用できるほどの身分なら侍女相手に拉致などせずとも権力を盾にして身体を差し出させることぐらい可能なはずであった。

(身分の低い者が私を連れ込んで部屋を無断で使っているとは考えにくいし……そもそも身体が目的なら)

 目が覚めた時、鼻息を荒くした誘拐犯が目の前にいても良さそうなものである。もちろん、レイラとしてはそんな状況などご免被りたい訳だが。

(何にせよ、今の私はさしづめ『囚われの令嬢』か。何者に囚われているのか、何をされるのかわからない恐怖に襲われ、怯える令嬢を待ち受けていたのは――ッ!)

 妙に冷静に同僚の騎士が休憩時間に読んでいた本の内容を思い出し、冷静な思考にヒビが入ったのは物語の先を思い出したからだった。ちなみに、その本――大人の男性向けである。

(まずい、まずいぞ……お嫁に貰ってもらえなくなってしまう!)

 この場にアンナが居て主人の心が読めれば、誰がお嫁に貰うんですかとツッコんだことだろう。周りが男の同僚で、同僚達もレイラを男だと思い接していたせいで、レイラは耳年増であったりした。

「こんな時はきっと白馬の王子様が助けに来てくれる」

 という逃避ではなく、いかがわしい本の内容を自分の未来と重ねて見てしまった辺り、やはり同僚達に毒されていたのだろう。

(くっ、落ち着け。落ち着いて状況を整理し対処法を考えるんだ)

 身体を縛られたまま戦うのは少々厳しい、脱出できそうな場所は正面の扉だけだろうがおそらく鍵がかかっている上縛られた足ではまともに歩くことも出来ない。

(そもそも、下着一枚で城内を逃げたりすれば、それはそれで――)

 恥ずかしい。普段男として暮らしているとはいえレイラにも乙女な部分はあるのだ。

「レイラ様を乙女にカテゴリ分けするのは流石に問題だと思います」

 などと幼なじみに真顔で言われかねない行動を普段しているとしても。

(よし、わかった。ここは騎士らしく相手に一矢でも報いて散ろう。身体が目的なら近づいては来るだろうし頭突きの一撃でも)

 何だか妙な方向に覚悟完了して、どこかすわった目をしているとしてもだ。勿論、アンナが聞いたらまた頭をひっぱたかれるような覚悟だったが。

「っていうかレイラ様、先ほどの今じゃないですかァァァッ!」

「す、すまないアンナ、冗談だ冗談。諦めはしない、最後まであがくから――」

 びくりと身をすくませ、そう弁解しようとして口をついて出たのはもごもごというくぐもった音だけ。

(いかんな、状況が状況だけに精神的に追い込まれてたみたいだ。すまない、アンナ)

 胸中でここにはいない幼なじみに、詫びると頭を振ってから身を起こした。そして、そのままぴょんぴょんと跳んでレイラは部屋の入り口に近づく。

(私は、負けない)

 まだ見ぬ誘拐犯を睨み付けるかのようにドアを睨み。

(来たか)

 外から聞こえた足跡に身体をかがめてバネを作る。縛られて歩くことは出来なくても跳ねることは出来るのだ。現れた人物が拘束をほどいてくれる保証がない以上この不自由な状況で相手を倒すしかないだろうと判断してのことだった。

(来い)

 鍵は外れ、がちゃりと音を立ててドアノブが回る。

(今……だ?)

 飛びかかる体勢を作ったレイラは飛びかかろうとした姿勢のまま驚きに目を見開き、硬直する。

(姫様?)

 思いの丈を言葉にし、笑顔が見たいと思った王女とそっくりの顔が驚きに目を見張り、自分を見ていたのだから。

「んんぁぁ!」

 反射的に騎士の礼をとろうとするが、縛られ無理な体勢でそんなことをしようとすればどうなるかは、子供でもわかる。

「ん゛んッ……ん!」

 レイラはバランスを崩して床に倒れ強かに腰を打ち、痛みで我に返った。

(危なかった、よくよく考えればこれじゃ性別は誤魔化しようがな――)

 皮肉にも身体を拘束されていたおかげで大ポカをやらかさずに済んだことをレイラは悟り、苦笑しながら起きあがろうとするが上手くいかない。

(そうか、縛られて居るんだった)

 状況を理解して顔を横に向ければ、そこには心配そうにこちらを見る王女の顔があって。

「ん゛ー!」

 レイラの顔が熟れたリンゴよりも赤くなる。身をよじりつつ下着姿でもがく姿を他人に、しかも想い寄せる人見られていた訳なのだから。

(まて、このままもがいていたら恥に恥を重ねることに……だが、現状維持でも問題は解決しない。そもそも、私が告白した騎士(あのレイル)だと姫は知らないのだから)

 混乱したまま固まっていたレイラへ王女は歩み寄ると身体をかがめ。

「んん゛ーッ、ん?」

 拘束された手を持ち上げられてパニックに陥りかけていたレイラは目を剥いた。腕の拘束を解こうとかの人物が持ち上げた手が胸に触れたのだ。レイラのではなく王女だと思った人物の胸に。

(おと……こ?)

 驚きに我を忘れたレイラは呆然としたまま少年の顔を見つめる。思い人そっくりな顔をした少年を。



あとがき

前書きで触れたとおり、内容をまとめておきます。


1:気がついたらレイラは一人下着姿で縛られていた。眠り薬を飲まされ拉致されたらしい

2:実は耳年増のレイラは現状に不安を抱いたり悲観したりしつつも、祖父の仕業でないことだけは確信し諦めず窮地を抜け出す決心をする

3:やがて外から物音がして誘拐犯が来たと思ったレイラは現れた人物に飛びかかろうとするもその姿に驚く。そこには思い人である王女そっくりの少年が居てレイラの拘束を解いてくれるのだった


だいたいそんな感じです。

そして続きます。

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