"BONFIRE"
田舎は不用心だ
僕のようなやつが、簡単に悪事を働け過ぎる
知らない家のテーブルに並んだ昼食を平らげ終えながら、僕はそう思った
「平らげ」と書いたが、実際には総てを食べた訳では無い
漬物と味噌汁はマズいから、一口しか手を付けて居ない
ワンチャンを期待しての一口だったが
こんなヘンな村の漬物が美味い訳が無い
貧しさを知って居るから、腹が立っても食事を床に投げたりはしない
代わりに物色がてら、家中のテレビと棚と仏壇を倒して、中身をばら撒いた
その甲斐あってか、数万円くらいは現金を手にする事が出来た
田舎の警察は馬鹿だから、きっと二、三駅くらい逃げれば捕まる事は無いだろう
最終的には、この予算を使って徒歩で他県まで逃げ切る予定だった
「そろそろお暇するか」と思った矢先、日捲りのカレンダーが眼に入る
今日はお盆か
家の主は恐らく昼食を用意したあと、駅に孫かなんかでも迎えに行ったのだろう
庭に乗用車がない事が、何よりもの証拠だった
「なら、もう少しのんびり出来るかもな」
そう思っていると、銃声がした
予想だにして居ない事だった
泥棒、と、外から叫び声がする
派手にやり過ぎて、近所の者に勘付かれたようだった
裏口から逃げれば、怪しくてもさすがに犯人とまでは思われないだろう
僕は田舎が好きだ
何処にもカメラとかがないから
裏口の扉を開ける
よりによってその先に、猟銃を持ったじじいが立って居た
「泥棒」と叫ばれるより早く
僕はポケットから出したナイフで、じじいの喉を突き刺して居た
『行動する時は、絶対にポケットに手を入れておく』という癖があって本当に良かった
或いは
毎日ちゃんと悪い子にしてたから、犯罪の神様が特別に眼を掛けてくれたのかも知れない
ざまあない事にじじいは、ごぼごぼ、とか、液躰的な音しか出せない喉で、何事か少し呻いたあと、慌てながら猟銃を構えようとした
その胸板辺りをまっすぐ蹴飛ばす
じじいは倒れて、そのまま死んだ
走って逃げようかと思ったが
僕は思いとどまって、ナイフを逆手に持ち直した
企業秘密なので話せないが、ある種の特別なやり方でざくざくに削ると、死体は簡単に『熊に殺された』風の姿にする事が出来る
もう三回目だったので、加工は簡単に終わった
一応、じじいの衣服を漁る
臨時に数千円の金が手に入った
その事に誰も気付かないよう、財布は死体のポケットに丁寧に戻す
僕は立ち上がりながら
逃走経路を、経験と照らし合わせて計算し終えて居た
「Jackpot !」
駆け出した
夕刻には、きっと捜査の手が及ばない場所まで逃げられるだろう
日頃の行いが良かったからか
夜に視たニュースや翌朝の新聞でも、犯行は熊によるものと断定されて居た




