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雨音のあとで
窓の外の雨音が聞こえなくなってからも、悠人はスマートフォンをぼんやり眺めていた。
悠人の指が止まる。
古い投稿の一枚。
小さな動物カフェの写真だった。
テーブル。
コーヒーカップ。
窓際。
ぼやけた店内。
写真の端に、小さなキャリーバッグが映っている。
淡いミントグリーンの小動物用キャリー。
悠人は画面を見つめる。
どこかで見た。
胸の奥が、小さくざわつく。
しばらくして、不意に思い出す。
クリニックの待合室。
俯いて座っていた、小柄な女性。
その足元に置かれていたキャリーバッグ。
ミントグリーンの色。
擦り切れた持ち手。
悠人の呼吸が少し止まる。
「……まさか」
小さく呟く。
けれど、すぐに首を振った。
似ているだけかもしれない。
たまたま同じ物を使っているだけかもしれない。
悠人は自分にそう言い聞かせる。
けれど、指は画面の上で止まったままだった。




